研究課題
研究2年目となる本年度は、佐賀県立図書館所蔵の近世後期佐賀歌壇の和歌資料ならびに鹿児島県垂水市文化館所蔵の近世後期和歌資料を中心に資料調査を実施した。佐賀県立図書館所属和歌資料の調査の結果、白石鍋島家第6代当主鍋島直章を中心として堂上の影響を受けた和歌活動のあったことを明らかにした。また白石鍋島家第7代当主直暠夫人芳子の詠草群を整理した。垂水市文化館所蔵和歌資料調査では、伊集院兼愷編『浪の藻屑』、自撰歌集『すさび草』『すさび草続編』について検証した。『浪の藻屑』は垂水島津家第13代当主島津貴典の命により家老の伊集院兼愷が編んだ歌集である。本歌集には、貴典達は飛鳥井雅光に師事し、添削指導を受けていた様子が見られる。また、『すさび草』『すさび草続編』には雅光との具体的な交流の模様がうかがえるほか、御所伝受に関する記述も見える。これらの歌集からは島津貴典を中心として垂水の地に堂上派地方歌壇とも称すべき歌壇が形成されており、活発な活動があったことがわかる。以上の研究成果については、学会で口頭発表を行った。また、垂水市での調査を進めるなかで、垂水市手貫神社に所蔵される幕末期の奉納和歌等の資料の存在が明らかとなった。これらの資料については次年度に整理・精査する予定である。加えて、昨年度から着手していた佐賀大学附属図書館小城鍋島文庫所蔵の肥前小城藩第二代藩主鍋島直能編の歌集『新拾葉集』の翻刻を展示図録に掲載した。
2: おおむね順調に進展している
日程の調整がうまくいかず、資料調査の実施にいたらなかったものもあるが、おおむね計画通りに、各所蔵機関の資料調査を実施し、書誌情報などの必要なデータを蒐集・整理することができた。また、調査を進めるなかで新たな資料の存在を確認することができた。以上の理由により、本年度の研究はおおむね順調に進んだと判断できる。
今後の推進方策について、当初予定していた内容から特に変更はない。本年度に確認することのできなかった資料群について調査を行い、その全貌を明らかにする。また、調査の過程で確認された新出の和歌資料群の整理・精査を行い、資料集としてまとめ、発表する。
日程調整の都合により本年度内の調査の実施が叶わず、次年度に見送ったものがあるほか、マイクロ資料等の紙焼きを入手できなかったものがあった。これらの資料については次年度に調査等実施する予定である。次年度では新出の和歌資料を調査整理し、資料集としてまとめることを考えており、その調査費や製本費用などに使用する予定である。
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佐賀大学地域学歴史文化研究センター研究紀要
巻: 14 ページ: 95-115