研究課題/領域番号 |
18K00307
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研究機関 | 神戸市立工業高等専門学校 |
研究代表者 |
土居 文人 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (20300600)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 文献学 / テクスト構築 / 写本 / 翻刻 / 北村季吟 / 地誌 / 名所案内記 |
研究実績の概要 |
北村季吟の写本京都地誌「菟芸泥赴」について、自筆本により近い古い形態と本文を持つと推測される「京都大学附属図書館蔵本・国会図書館蔵本」のマイクロフィルム作成をおこない、全巻の紙焼き写真(A3版)を入手した。また、また、京大本に近い本文を持つ国立公文書館内閣文庫蔵本B(172-150。巻4下・巻6欠)を写真撮影し、デジタルデータを入手した。また、京大本と比較して、筆写の過程で変更されている可能性はあるが良質な本文を持つ宮内庁書陵部蔵本(巻4上下・巻5・巻6欠)のマイクロフィルム作成と紙焼き写真の入手をおこなった。なお、筑波大学附属図書館蔵本については、過去の調査で本文の質が劣っていることがわかっているため本文資料入手は保留した。 以上の入手した本文資料を使用して、「菟芸泥赴」の翻刻を開始した。巻1の翻刻の段階では、内閣文庫本Bの本文によって京大本の誤脱を相当に補完できること、また宮内庁本は京大本系の落字・脱文がなく、おそらく校訂された文章であり、諸書・和歌の引用は、より正確な表現で記されていることがわかりつつある。すなわち、現段階では、京大本・内閣文庫本B・宮内庁本を主要資料として、「菟芸泥赴」の定本となるテクストを構築中である。 「菟芸泥赴」は『編修地誌備用典籍解題』巻4・別記第一・山城(浄書本。国立公文書館内閣文庫蔵)に「是書は、いふもさらなり、古蹟寺社の事実引據みな正しく、その詞も今めかしからすして義理通しやすく、季吟にあらされはあたわす」と記された重要な京都地誌である。その信頼できる本文の提供は、今後のさまざまな分野においての京都研究に役立つことは間違いない。また、2018年度までにおこなった他の近世の地誌の翻刻・研究の成果とあわせて、地誌・案内記編纂の方法論や目的に関する考察をおこないつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
京大本・国会図書館本・国立公文書館内閣文庫蔵本A(172-150)と酷似する形態と本文(改行・改丁箇所のレベルで)を持つ重要な諸本である「無窮会神習文庫蔵本」については、無窮会専門図書館の改修工事の延長のため2018年度は閉館中であった。それゆえ、資料調査・マイクロフィルム作成・紙焼き写真の入手ができなかった。2019年度中の閲覧業務再開が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
京大本を底本とし、主として内閣文庫本B・宮内庁本で校合をおこなって、「菟芸泥赴」の翻刻を進める。そして、京大本のテクストに季吟の草稿としての痕跡が残されているのかという問題について、調査を進める。また、翻刻の過程で、「菟芸泥赴」における引用資料に関する調査をおこなう。そして、「菟芸泥赴」の制作に関して、著者の北村季吟がどのような考えや意図を持っていたのかを探っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
無窮会専門図書館の改装工事が延長され、2018年度も閉館中であったため、無窮会神習文庫蔵本のマイクロフィルム作成・紙焼き写真入手ができなかったため。2019年度に開館すれば、東京出張をおこない、上記マイクロフィルム作成・紙焼き写真入手をおこなう。
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