研究課題/領域番号 |
18K00312
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
BJOERK TOVE 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 准教授 (90747974)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 歌舞伎 / 人形浄瑠璃 / 芝居茶屋 / スキャンダル / 出演料 |
研究実績の概要 |
2020年度の「近世期の芝居茶屋の研究」実績は以下の通り。 ①二代目團十郎の日記調査を続き、連載中二代目團十郎の日記諸本の注釈解説シリーズの第四回を連載した (「二代目市川団十郎日記詳解第四回―享保十九年四月三日~五月五日」、掲載誌名『埼玉大学紀要(教養学部)』(第56巻(第1号)、125~139頁)2020年9月)。その中から芝居茶屋に関する注目すべき情報を別当に収集し、2021年度執筆予定の葺屋町の芝居茶屋についての論文を準備した。 ②芝居茶屋を現場とする正徳4(1714)年に起きた江戸城の女中と歌舞伎役者の密通事件を芝居茶屋の観点から英語で発表した(章著書The Ejima-Ikushima Scandal in“Theatre Scandals”, Leiden: Brill Publishing House (2020), pp121-145)。 ③近世期の芸能の興行環境を知るために、歌舞伎役者と人形浄瑠璃の演者の大名屋敷の出演料を調査し、旅芝居から得た出演料と比較し、劇場で行わない興業の場合、人形浄瑠璃の演者は歌舞伎役者より高い出演料を得たという新な発見をし、論文として発表した(論文名「江戸中期の歌舞伎役者と人形浄瑠璃演者の出演料」掲載著書『書くこと・書かれたものー 表現行為と表現―』(埼玉大学教養学部リベラル・アーツ叢書12,37~48)2021年3月)。 ④歌舞伎常連客だった大和郡山藩藩主柳沢柳沢信鴻の諸日記から芝居茶屋との関わりが描写されている記録を抜粋し、芝居茶屋のメニューや宣伝方法についての分析を準備した。また、歌舞伎役者初代中村仲蔵の自伝「月雪花寝物語」から、芝居茶屋の興行準備や役者移動の時の関与についての記録を抜粋し、その分析を準備した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は、新型コロナ感染症の影響で、資料調査や学会参加のための出張が困難であったため進捗にやや遅れが生じているが、デジタル化された資料や既に手元にある資料を調査し、論文執筆を行った。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の計画は以下の通り。 ①二代目團十郎の日記調査に続き、連載中二代目團十郎の日記諸本の注釈解説シリーズの第五回と六回の連載(『埼玉大学紀要(教養学部)』(第57巻(第1・2号)) ②二代目市川團十郎日記、初代中村仲蔵の自伝、そして歌舞伎常連客だった大和郡山藩藩主柳沢柳沢信鴻の諸日記を元に芝居茶屋と歌舞伎役者の関係、劇場周辺の飲食店やその宣伝方法についての分析を行い、また「日本橋人形町三丁目遺跡」1&2に発表されている発掘された芝居茶屋の食器や貝類、動物骨などと比較し、葺屋町の芝居茶屋を中心に論文にまとめる。 ③大分県立図書館で旅芝居と地域の茶屋株仲間の記録が多い「府内藩記録」の原本調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に予定していた国際学会や資料調査の出張は中止となったために次年度使用額が生じた。2021年度、この使用額を研究室のパソコンやプリンター、スキャナーを更新するために使う予定だ。
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