研究課題/領域番号 |
18K00315
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
閻 小妹 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 特任教授 (70213585)
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研究分担者 |
氏岡 真士 信州大学, 学術研究院人文科学系, 教授 (60303484)
木越 俊介 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (80360056)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 俗語解諸本 / 立正本・岩瀬本 / 沢田本・長沢本 / 日本人作白話文 / 日本近世小説 / 忠臣蔵演義 / 忠臣水滸伝 / 海外奇談 |
研究実績の概要 |
研究分担者と共同で論文「『杜騙新書』の国立国会図書館蔵抄本について」を大学紀要に掲載しました。 明の短編小説集『杜騙新書』は、かつて日本でも愛読され、抄本(写本、 鈔本)もいくつか現存している。そのうち日本の国立国会図書館蔵抄本は、複数の手による書き込みが認められるなど、江戸時代における『杜騙新書』の受容や読解について、その実態の一端を反映する好個の資料である。論文では、江戸時代の和刻本にも収録された全 17 話に絞って、全体的な特徴を整理しながら、書き込みの具体相を検討した。 ほかに「『忠臣水滸伝』の成立ー『忠臣蔵演義』の介在を中心にー」という題目の論文原稿を完成した。 山東京伝の『忠臣水滸伝』(寛政11年刊行)は、当時流行の中国長編白話小説『水滸伝』と、寛延元年の初演以来浄瑠璃・歌舞伎等で繰り返し上演され、演劇以外にもあまたの影響を与えてきた『仮名手本忠臣蔵』とを撮合して制作されたものである。『水滸伝』と本作との関係については、先学による詳細な比較研究が備わるが、忠臣蔵に関しては、浄瑠璃本以外の典拠について言及されることはなかった。しかし、本文では明らかなように、浄瑠璃に拠ったと思われる箇所にもきわめて濃厚な白話的文体が採用されており、京伝が典拠として利用したものが存在した可能性を思わせる。論文では、『仮名手本忠臣蔵』の白話訳である『忠臣蔵演義』(早稲田大学蔵写本)は『忠臣水滸伝』の典拠の一つであることを指摘し、その特徴について具体的に説明した。さらに『忠臣水滸伝』の本文と比較することにより、本作を構想するにあたって、京伝がいかに『忠臣蔵演義』を利用したかを検証した。結局、京伝は浄瑠璃本の白話訳『忠臣蔵演義』を入手したことにより、はじめて日本の浄瑠璃と中国の白話章回小説『水滸伝』という異質なものを文体的にも内容的にも無理なく結合することが可能になったとの結論になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
去年コロナ禍で研究分担者との打ち合わせが不十分で、最後の調査報告書を作成できなかった。 中国各地の図書館の『海外奇談』状況を調査する計画したが、実現しなかった。なお、中国国家図書館に所蔵している『海外奇談』の調査、複写もできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今年は研究分担者との打ち合わせを対面だけではなく、ズームなどオンラインで話し合いを進め、調査結果をまとめる予定である。 「『忠臣水滸伝』の成立ー『忠臣蔵演義』の介在を中心にー」という題目の原稿を充実させ、日本近世文学会の学会誌に掲載する予定である。 『俗語解』の岩瀬本の全文を語彙ごとに分類し、『俗語解』の岩瀬本の翻字、索引と調査結果をまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度コロナ禍で研究分担者との打ち合わせが不十分で、最後の調査報告書を作成できなかった。 中国各地の図書館の『海外奇談』状況を調査する計画をしたが、実現しなかった。また、中国国家図書館に所蔵している『海外奇談』の調査、複写もできなかった。 そのため、予定していた海外出張に行けず、次年度使用額が生じた。次年度使用額は海外出張旅費として使用したいが、海外渡航が引き続きできない場合には、研究関連図書の購入に充てたい。
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