研究課題/領域番号 |
18K00322
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
西田 正宏 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (00305608)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 古今和歌集 / 注釈書 / 古今伝受 |
研究実績の概要 |
大阪府立大学図書館蔵の古今伝受関連資料について、奥書集成及び内容についての詳細な解題を作成するため、個別の資料の奥書の読解、翻刻を中心に行った。 まず全体の把握のために全体の簡単な目録を作成した。図書館には受け入れ原簿しかなく、版本と写本の区別もついていない。書名も内題でとられているもの、外題でとられているもの、まちまちである。また受け入れた蔵書のなかには、古今伝受とは関係のないものも含まれている。けれども、それらも含めて全体の把握のために、詳細な書誌ノートを作成することにした。蔵書数は約100点あり、約70点の調査を終了した。今後のために、全冊スキャナーで取り込んだ。 また、それと並行して小澤蘆庵『古今集抄』の検討を行った。この資料は、2017年度に前回の科研費で一定の見通しが立っているものの、やはりすべてを翻刻する必要があると思われるので、特に後半は、その作業に費やし、すべてを翻刻し終えた。 また、この翻刻データを基に、同時代の注釈書や、先行する注釈書との比較検討を進めた。現在のところ、はっきりとした影響関係を持つ注釈書は見いだせず、蘆庵の独自性について、さらに検討していきたい。 今のところ、小澤蘆庵の古今集の注釈書は大阪府立大学蔵本以外、知られていない。現存は、二冊(上・下)本だが、ちょうど中巻にあたると思われる恋の部が抜けており、本来は三冊本であった可能性が高い。そのため、検討の成果を直ちに報告することがためらわれる。古書店などかから「中巻」にあたる部分が出てこないか、あるいは、他の機関に所蔵されていないか、注意したいと思う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
古今伝受資料の奥書の翻刻、小澤蘆庵の古今集の注釈書の翻刻、検討などは、当初の予定通りであったが、天文十一年の本奥書を持つ『諸家/口伝 古今和歌集秘説(外題・内題とも)(乾・坤にわかれる)』は、切り紙の集成と見受けられ、それらがどのような性格のものであるのかを見究めるために、他の切紙と比較検討を行う予定であったが、それについては、翻刻を終えただけで、比較検討にまでは、至らなかった。ただし、翻刻しつつ、おおよその内容については把握しているので、ターゲットをしぼった比較が可能であると思われる。 奥書集成も順調に進んでおり、小澤蘆庵の古今集の注釈書の翻刻も終えたので、全体としては、おおむね順調に進展していると言えよう。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、古今伝受関係書籍の残りの30点について、継続して書誌カードを作成し、すべてを終えた時点で、奥書集成として公表したいと考えている。また昨年度課題として残した『諸家/口伝 古今和歌集秘説』と他の切紙類との比較検討も進めたい。 さらに一条兼良に関わる古今伝受資料の研究を始めることにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
大学公務が忙しくなり、当初予定していた東京方面(国文学研究資料館や内閣文庫など)への調査が行けなくなってしまったため、次年度使用額が生じてしまった。次年度は、講義や会議のない日の日程調整をし、宿泊が不可能な場合は、日帰りで、目的を絞り込んだ調査を計画している。
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