本研究は、江戸末期の臼杵という一地方に生きた文化人、加島英国という人物を、書物と遺物から浮かび上がらせようという試みであった。英国の名と業績は、一部の郷土史家にのみ知られていたものといってよいが、今回、彼の子孫からの寄贈品の目録を完成させることで、改めて英国という人物の活動の総体を見渡す契機とすることができた。 また最終年度の調査からは、英国による地誌編纂とその伝来にかかわる新たな知見が得られた。今後、詳しく紹介する予定であるが、地方に蓄積された知の継承という問題を考えるうえでも、英国の事例は貴重なモデルを提供する。それは、19世紀末における近代の知の形成ということとも関係していく。
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