研究課題/領域番号 |
18K00324
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研究機関 | 獨協大学 |
研究代表者 |
飯島 一彦 獨協大学, 国際教養学部, 教授 (50212692)
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研究分担者 |
城崎 陽子 獨協大学, 国際教養学部, 特任教授 (20384000)
本塚 亘 獨協大学, 外国語学研究科, 研究生 (20816136)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 風俗歌 / 東遊歌 / 賀茂真淵 / 本居宣長 / 村田春海 / 小山田与清 / 高野辰之 / 国学 |
研究実績の概要 |
2018年度は、神宮文庫・静岡県立図書館・鍋島徴古館・本居宣長記念館等における、主として基礎的データ(平安期のテキスト、中世のテキスト、近世国学者が関与して生成したテキストと注釈)の調査・収集と、既存(既刊)のテキストデータの収集、研究動向の把握のための学会出席につとめた。 その結果、風俗歌・東遊歌に関する、より古い時期の書写を示唆する新しい資料の発見は得られなかった。これは当初よりある程度予測できたことで致し方ない。ただし、それによって、『承徳本古謡集』および鍋島家本『東遊歌神楽歌』同『東遊歌風俗歌』がより古いテキストを示すものであることが明らかになった。これは今までの研究では自明のこととされて、あらためて問われることのなかった知見である。 当初予想されなかった顕著な知見としては、近世国学者による風俗歌・東遊歌のテキスト作成の営為が、一つの系統は賀茂真淵→本居宣長→宣長の弟子の国学者達という流れで多数のテキスト生成が行われて来たことと、村田春海→小山田与清(『楽章類語抄』のテキスト)という系統の二つがあったことがほぼ明白で、その他の流れがほぼないということが分かってきたことが挙げられる。しかも、近代にいたっての歌謡研究に大きな影響を与えたのは、前者の系統の写本テキストが圧倒的に多数であるにもかかわらず、後者の『楽章類語抄』テキストだったのである。 今後は賀茂真淵自筆本の発見と、高野辰之の関わった風俗歌・東遊歌のテキスト生成の様態を明らかにすることと、当初の目論見通りの平安期以来の動的なテキスト生成の在り方を探っていくことに注力することになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
具体的には諸本調査が当初の予定よりはやや進んでいないことが大きい。 個別的には、国立国会図書館の高野辰之本や筑波大学図書館の賀茂真淵自筆本とおぼしき写本の調査にまだ臨めていない。これは、本居宣長系統の風俗歌・東遊歌写本が思いのほか多数出現していて、整理に手間取っているせいである。 しかし全体としては、近世国学者が多数のテキストを派生させてはいるが、より古い形でのテキストの動的生成の様態を描ける材料は揃ってきているので、特にひどく遅れているというわけではない。
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今後の研究の推進方策 |
より古い時代の風俗歌・東遊歌のテキストについては、すでに報告されているもの以外には存在しないだろうということがほぼ明らかになったので、これからはそれらの材料の中で、風俗歌・東遊歌のテキストの動的生成の様態を明らかにしていく。また国学者の二つの写本系統をより明確に描くことに努める。 ただし、調査の過程で、本居宣長の新出の自筆自選歌集『しきのうた』が出現した。これは書物自体の存在はかつて報告されたことがあるが、内容については『本居宣長全集』にも収録されていないものである。これによって、風俗歌・東遊歌が宣長の国学者としての営為にどのような影響を与えたかを探る新たな方法が出現したことになる。 当初の計画には風俗歌・東遊歌のテキストが国学に対してどのような影響を与えたかという命題までは入っていなかったが、城崎陽子が特にこれに当たって、風俗歌・東遊歌のテキスト生成の動的様態の一端を明らかにすることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
図書資料の購入額が予定通り年度内には支出できなかったことと、予定より調査に出かける回数が少なく、旅費を支出できなかったことが大きい。 繰り越した金額は、次年度には新出の宣長自筆歌集『しきのうた』の購入費用に主に宛てることとする。
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