丹緑本とは、江戸時代初期に制作された版本に彩色を施した絵本群のことである。その国内外に存在する伝本を調査研究する予定であったが、残念ながら2019年度末から流行した新型コロナ感染症の影響を受け、国内外の調査はほとんどできなくなってしまった。研究期間を2年延長したが、予定した海外調査のほとんどは、実現できなかった。しかし、国内での調査や既に所持している画像での研究は進めることができた。その結果、最も大きな謎であった、丹緑奈良絵と呼ばれる、御伽文庫の初版は、後世の塗り絵ではなく、版本制作時に、制作業者によって色付けされたものと推測できるようになった。その版木を元に御伽文庫本が量産されたのである。
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