西鶴没後刊行された浮世草子『西鶴冥途物語』には西鶴生前の俳諧に関する記述が多々あり、同じく浮世草子の『寛濶平家物語』には西鶴の『好色一代男』の挿絵を謗る文章があるなど、いずれも従来注目されてきた作品であるが、その作者はこれまで未詳とされてきた。本研究の成果により上記2作が西鶴の門人北条団水の作であることが特定できたことは、西鶴をめぐる今後の俳諧、浮世草子研究の進展のために特に重要な成果である。その他、本研究期間の成果を用いて、近世前期の漂流記と俗文芸との関係を明らかにしたほか、『仁勢物語』『吉原徒然草』『好色一代男』の解説を新見をもって執筆するなど、近世前期文学研究の基盤を整えた。
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