本研究は、未翻刻浄瑠璃正本を翻刻し、活字化された作品を国内外の研究者にテキストを提供して学術的に貢献することを目的とする。その一環として、研究最終年度において、以下の活動を行った。 1.未翻刻浄瑠璃本の調査、翻刻作業:未翻刻浄瑠璃を翻刻するにあたって、底本となる浄瑠璃本を選ぶため、世界最多の浄瑠璃本を所蔵し、画像データベースとしてWebページで公開している早稲田大学演劇博物館の資料を優先的に調べて、その中から『唐錦艶書功』(1794年初演)を翻刻した。 2.翻刻したテキストのWebページ公開のためのテキストデータの作成:上記の作業による翻刻テキストのデータベースを公開するため、『唐錦艶書功』(1794年初演)を開設したWebサイトで公開した。また、公開に向けて『容競唐土噺』(1768年初演)、『七草若菜功』(1782年初演)、『讃州屏風浦』(1778年初演)、『千里竹雪曙』(1798年初演)のテキストデータを再度確認して順次公開する。さらに、すでに翻刻テキストのある作品から、海外の関連研究者の要望に応じて、『国性爺合戦』(1715年初演)、『本朝三国志』(1719年初演)、『菅原伝授手習鑑』(1746年初演)を韓国語を中心に翻訳して公開する。 研究期間中に新型コロナウイルス感染拡大の影響により、国内外で行う予定であった浄瑠璃本と関連資料の調査、研究会の開催などが困難な状況となったことで、事業期間の延長が承認され、研究を進めることとなった。これを機に、本研究が目的とした、日本の古典演劇に関心をもつ研究者に該当分野の情報をWebページで提供して学術的に貢献する活動が、より意義をもつようになったと思われる。今後もこのような研究成果を踏まえて、積極的に翻刻・翻訳したテキストをインターネット上に公開して、成果の利活用を促進していきたい。
|