研究課題/領域番号 |
18K00336
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
小林 一彦 京都産業大学, 文化学部, 教授 (30269568)
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研究分担者 |
彬子女王 京都産業大学, 日本文化研究所, 研究員 (20571889)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 書誌学 / 伝統産業 / 最先端技術 / 複製古文書・古典籍 / 書物文化 / 産学連携 / 京都学 / 次世代への継承 |
研究実績の概要 |
コロナウイルスの感染状況が拡大にともない、緊急事態措置、まん延防止等重点措置がほぼ年間を通じて発出され続けた昨年度は、古典籍原本を調査することにより、その書誌学的な知見をもとに研究を進める当該研究計画の遂行には、大きなハンディがあった。残念ながらそうした調査を踏まえての、骨太で本格的な学術論文を作成し、公開するまでには至らなかった。 しかしながら感染状況の隙間をねらって、静嘉堂文庫、、東京大学総合図書館、国文学研究資料館、国立公文書館内閣文庫などに出向き、原本調査を行った。特に静嘉堂文庫の調査は有益で、松井簡治旧蔵古典籍の鉛筆による書き入れなどは、近代における校合の様相をよく伝える興味深い事例を確認することができた。 また、昨年度までに継続して行ってきた古典籍の原本調査データをも加味して、冷泉家時雨亭文庫の機関誌「しぐれてい」に、4回にわたり「御文庫の典籍から」というサブタイトルの小論にまとめ、掲載公開することができた。 地道な研究活動の遂行の点で、原本古典籍の調査ができなかったことは大きいが、それとともに、研究成果公開および発信の点においても、対面による大きな学会や小規模な研究集会の開催にも支障が生じた。国民に向けた研究実績還元活動の一つの柱には、セミナーや講演が上げられるが、その機会も大幅に縮小した。 そのなかにあって、「日本講演新聞」を発行する業者と連携し、紙面で講演を実施するという試みを行った(「今読みたい古典のはなし」1~4回)。また国民向けに『JAPONismeジャポニズム』夏秋28号<特集 古典の日 十一月一日は古典の日、なぜ!?>の巻頭に「古典は嫌いですか」を古典の日にあわせて掲載し、関連行事で来場者に配布する機会を得た。また、京都市生涯学習振興財団などで講演活動を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該研究の遂行には、古典籍の原本調査が欠かせない。その多くは、東京に集中している。日本の古典文学の精髄は「古今和歌集」「源氏物語」「枕草紙」「徒然草」などに代表される宮廷文学であり、その多くは京都で育まれたが、明治維新以後は、天皇家・宮家に従い、公家衆も京都留守居役の冷泉家を残し、すべて東京へと移住した。現在、古典籍の多くは図書寮の流れを汲む宮内庁書陵部をはじめ、幕府和学講談所の流れを汲む国立公文書館内閣文庫、また国会図書館、国文学研究資料館、東京国立博物館などの公的機関、前田家尊経閣文庫、細川家永青文庫、佐竹家千秋文庫などの旧大名系文庫、また諸大名・公家の文化財は近世から近代にかけて豪商・財閥に吸収され、静嘉堂文庫、三井文庫、大東急文庫(五島美術館)、出光美術館、大倉集古館などに収蔵されている。 先般来の新型コロナウイルスの感染拡大は、特に昨年度はすさまじい状態で、そうした事態への対応にともない、上記のような所蔵機関の多くが門戸を閉ざした。また勤務先からも調査研究のための出張許可が、当然のこととはいえ下りず、古典籍の原本調査、書誌データの収集と分析のための機会が大きく失われた。当該研究を遂行する上でも欠かせない基盤を成す調査研究が、停滞せざるを得なかったことは痛恨事である。 これに加えて、最新の先端科学技術を採用しつつ、伝統工芸によるものづくりの一環として複製文化財・古典籍の製作と活用を実践している(株)富士フィルムビジネスイノベーションジャパンの京都支社文化推進京都工房の担当者など、当該分野において先進的な試みをさまざま実践して成果を上げている人々からの、貴重な助言などを得る機会も大幅に縮小した。 こうした諸要因が重なり、研究活動が必ずしも順調には進まず、立ち遅れる結果となった。
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今後の研究の推進方策 |
当該研究はその性格上、古典籍の原本調査をベースとして成り立っている。調査研究のための国内旅費が、支出の大きな部分を占めていた。「現在までの進捗状況」の項でも述べたが、新型コロナウイルスの感染がまん延し、救急事態宣言やまん延防止等特別措置による府県をまたぐ旅行が自粛を余儀なくされ、調査研究のための出張が停止された状態が長く続き、計上していた旅費の予算が支出できなかったことが最大の要因である。 今年度は、滞っていた調査研究を積極的に行い、特に古典籍の所蔵機関が集中する東京・首都圏への出張を行い、そのための旅費に支出することを計画している。 新型コロナウイルスの感染の波は、いつまた上昇カーブを描くことになるか、予測がつかない。現在、穏やかな状況が続いており、春学期に特に精力的な調査研究を行うことで、研究費の支出を計画している。 また、最終年度でもあり、研究成果の発信・公開についても、YouTubeなどを通じて手軽にWeb上にアップ可能な短めの動画を制作する経費にも使用したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該研究はその性格上、古典籍の原本調査をベースとして成り立っている。調査研究のための国内旅費が、支出の大きな部分を占めていた。「現在までの進捗状況」の項でも述べたが、新型コロナウイルスの感染がまん延し、救急事態宣言やまん延防止等特別措置による府県をまたぐ旅行が自粛を余儀なくされ、調査研究のための出張が停止された状態が長く続き、計上していた旅費の予算が支出できなかったことが最大の要因である。 今年度は、滞っていた調査研究を積極的に行い、特に古典籍の所蔵機関が集中する東京・首都圏への出張を行い、そのための旅費に支出することを計画している。 新型コロナウイルスの感染の波は、いつまた上昇カーブを描くことになるか、予測がつかない。現在、穏やかな状況が続いており、春学期に特に精力的な調査研究を行うことで、研究費の支出を計画している。 また、最終年度でもあり、研究成果の発信・公開についても、YouTubeなどを通じて手軽にWeb上にアップ可能な短めの動画を制作する経費にも使用したいと考えている。
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