大岡昇平文学の研究において自筆資料までをその対象としたものは、当該研究者花崎による科研費課題(課題研究番号:21520217・平成21~24年度、2537026・平成25~29年度)以外はほぼ皆無であった。本研究はこの現状に鑑み、上記花崎の研究に連なるものとして構想ノートや原稿段階からの大岡文学の基礎的総合的研究を行った。『花影』の女主人公の孤絶化・孤高化への生成過程を平成30年度に論文として公開した。「逆杉」の構想の変更、「釣狐」の古典からの離陸と近代小説化の過程については令和5年度に論文公表の予定である。 これらの研究により大岡昇平文学の戦後期における作品生成の諸相を具体的に実証した。
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