第一に、新出の早歌(宴曲)譜本の資料的位置付けを行った。大西家所蔵『拾菓集』が京観世五軒家のうちの岩井家旧蔵であること、早歌中興の祖坂阿がその書写者である可能性が極めて高いことを指摘した。『撰要両曲巻』(所在不明であったが、国文学研究資料館の所蔵となったこと)に朱で注記を施した人物が京観世五軒家の浅野栄足であることを発見した。第二に、早歌詞章が軍記物語に与えた文学史的な影響について考察した。第三に、新潟吉田文庫および国文学研究資料館の新収資料の調査に基づいて、近代における早歌(宴曲)研究について総合的な整理を行った。
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