研究課題/領域番号 |
18K00343
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研究機関 | 国文学研究資料館 |
研究代表者 |
ダヴァン ディディエ 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (90783291)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 禅宗仮名法語 / 大燈国師仮名法語 / 大燈派 / 夢窓派 |
研究実績の概要 |
初年度の主な作業としては資料収集と調査の他に、日本禅籍の再検討に基づいて中世末期以降の臨済宗の思想的な特徴を探る研究も行った。現段階においては、中世末期の臨済宗を大燈派と夢窓派(五山派)の二つのグループに分けているが、それは近世まで続いた禅思想の二つの軸であった可能性が高い。その分類をさらに細かくする必要があるが、それは研究の途中段階である。予想されていた結果(例えば『大燈国師仮名法語』はやはり大燈派の特徴である「教門」拒絶の立場を取っている)の外に、意外な発見もあった(例えば、『永平仮名法語』は曹洞宗の立場ではない事は既に指摘されていたことだが、思想的に大燈派に近いという事は新しい発見である)。 また、当初研究対象でなかったテキストを視野に入れる事になった。特に、仮名法語として意識されていない『永平和尚業識図』について国文研と駒澤大学で調査した結果、道元に擬された点や挿絵に一貫性が見えてきたが、これとは別に全く異なる系統に属する枋木家蔵の写本があってその内容の研究を始めた。さらに、花園大学や名古屋大学の研究者との交流の際に鎌倉時代のテキストは後に仮名法語として扱われた事が判明し、そのテキストも本研究の目標である「思想的マッピング」に入れることにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた資料調査は概ね予定通りに進んでいる。調査できなかった資料(東福寺蔵『大応国師仮名法語』)があったが、一方新しい資料を発見出来た(『業識図』)。なお、今年は研究分析が大きな部分であったため仮名法語の具体的な検討は数件に留まった。大燈派と夢窓派の対立を中世禅思想史に位置づけたのは研究の大きな進展である。鎌倉期、つまり大燈と夢窓以前の禅僧の仮名法語の分析が残っている課題ではあるが、道元の仮名法語で分かったように、室町後期の見解が含まれているテキストがあるため出来上がりつつある分類基準がそれらにも適用できる可能性が高まった。以上のことから残り2年間で仮名法語の全体的な分類を行うための下準備をほぼ整えたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の作業は仮名法語の分析と分類になる。なるべく網羅的に進めたいと考えている。具体的にはデータベースの形になるが、分類の理由を実証的に提供するのがその際の課題になる。その根拠や全体的な論法について論文の形に纏めると共に、国際会議であるEAJSでも発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査先の事情により見送った京都への出張を次年度に繰り越した。
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