研究課題
最終年度に、研究代表者の佐竹保子は「謝霊運「江中の孤嶼に登る」の「江南」「江北」――その詩語としての意味――」を、大東文化大学『語言教育研究論叢』第38号に発表し、仏教思想の影響を受けたと考えられている詩人謝霊運(385~433)の「登江中孤嶼」詩にある「江南」「江北」について、それらが詩人の実際の足取りを記すとする先行研究に対し、それらは、謝霊運に至るまでの詩賦群に用いられてきた文脈や含意をゆたかに帯びる詩語であり、該詩中核部分の宗教体験の表現を導くものであることを示した。さらに、謝霊運の同族でその後輩にあたる謝チョウ[月兆]をとりあげて、「謝チョウ「遊東田」末聯にかかわる二、三の問題」を、『六朝學術學會報』第22集に発表した。「遊東田」詩の解釈史をたどる中で、唐代すでに二種類の解釈が提出されていたのに近年最古の解釈が無視されてきたことを明らかにし、その上で二種の解釈の妥当性如何を検証する必要を指摘し、同時に、該詩末聯末字の「郭」が謝霊運「富春渚」詩の「郭」の含意を襲っており、それゆえ先行説のような「城郭」「村里」という限定的意味に狭められるべきではないことを論じた。研究分担者の齋藤智寛は、「《続高僧伝・雑科声徳篇》所見説法師的活動:以釈真観和《聖武天皇宸翰雑集》為中心」を「2020仏教文献与文学」国際学術研討会で口頭発表し、日本古来の文献を用いて当時の仏教僧の活動を明らかにした。また、「『続高僧伝』感通篇・釈道英伝に見る中国六・七世紀の仏教」を『集刊東洋学』第124号に発表し、中国六朝末期の仏僧たちの行為や言説がのちの禅宗に近似していることを示した。さらに『中国禅宗史書の研究』を臨川書店から上梓して、唐代から北宋初期に至る禅宗史書を精細にたどり、初期の禅宗の信仰者たちの多彩さと多様さを如実に浮き彫りにした。とくに右の二篇は、研究代表者に大きな示唆を与えた。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)
語言教育研究論叢
巻: 38 ページ: 1-14
六朝學術學會報
巻: 22 ページ: 43-60
Gender History in China(Kyoto University Press,TRANS PACIFIC PRESS、全503頁)
巻: 0 ページ: 84-101
集刊東洋学
巻: 124 ページ: 66-85
被埋没的足跡:中国性別史研究入門(全527頁、國立臺灣大學出版中心)
巻: 0 ページ: 87-104