研究課題
基盤研究(C)
本研究は日本植民地統治下の台湾で創作されたハンセン病患者の文学創作を考察するものであり、最も重要な資料である『万寿果』を収集し、その分析を行った。日本内地のハンセン病文学と同じように、入所者の多くは学歴が高くないために、短歌や俳句など定型表現が多数を占める。台湾ならではのハンセン病文学は、台湾人入所者が創作したものであるが、彼らも日本語による作品を残していた。研究期間の後半では、何人かの入所者に焦点をしぼり、個性あふれる文学創作の分析を重点的に行った。
台湾文学
本研究課題は、そもそも植民地台湾のハンセン病文学とはどのようなものか、という初歩的な問いから始まった。日本における従来のハンセン病文学研究は、基本的に日本「内地」のテクストしか対象としておらず、台湾など植民地のテクストは視野の外に置かれている。一方でこれまでの台湾文学研究も、ハンセン病患者の創作を対象としたことはない。近接するいずれの学問領域からも、植民地のハンセン病文学は正面から論じられたことはなく、本研究の成果によって、ハンセン病認識に新たな視座を提供することが可能になった。