研究課題/領域番号 |
18K00350
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
上田 望 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (90293331)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 中国文学 / 地方劇 / データベース / 講唱芸能 / 講唱文学 |
研究実績の概要 |
本研究課題「中国演劇・講唱文学資料総合データベースの構築と新しい中国芸能史研究の試み」は、これまで別個に断片的にネット空間に存在する中国の演劇、講唱文学に関する映像・写真・音楽・脚本のテキストデータという4種類の情報を統合するデータベースのプラットフォームを設計し、中国や日本国内で調査・資料収集を進めてデータを拡充しデータベースとして公開することを主たる目的としている。そしてこれらのデータの横断検索機能などを活用して演劇、講唱文学の成立と展開、伝播について各種の客観的データを基に総合的に分析する新しい研究方法の確立を目指している。4年計画の初年度は2019年2月と3月に台湾の台北、桃園、中国大陸の上海、蘇州、杭州などの各地域で民間信仰・祭祀儀礼や布袋戯などの地方劇の現地調査を実施した(旅費の使途)。そして収集した映像や画像の資料を整理して画像や文字情報の電子化を進め(謝金の使途)、中国伝統芸能映像資料データベースのコンテンツの拡充を図った。中国俗文学データベースについては、金沢大学総合基盤メディアセンターの協力をうけ、「宝巻」「江蘇南通僮子戯」の脚本や上演資料の画像データを大学内のサーバーにアップし、6月から一部を公開する予定である。またデータベースを利用した研究成果の一端を、金沢大学人文学類シンポジウム「〈旅〉と文学」(金沢大学、2019年3月20日)で「西天取経の旅は誰のため?――『西遊記』の物語構造をめぐって」として報告し、中国年文化高端論壇(海南玉蟾宮、2018年4月24日)にて招待講演「日本的新年伝統儀式」と題して日本の祭祀儀礼、伝統芸能と結びつけて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本務校の業務の関係で2018年夏に中国広州での現地調査が実施できなかったが、2019年2月、3月に台湾と中国で調査を行っており、広州にある中山大学から各種資料の提供をうけるなど次年度以降に挽回は可能である。データベースの構築とデータ整理については、専門のIT技術や中国語読解能力を有する人材が不可欠であり、本年度はそれぞれ各1名の有能な協力者からのサポートを受け、ほぼ当初の計画通りに作業工程が進捗していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
平成32年度は前年度に引き続き、本研究が最終的に完成させようと企図する中国演劇・講唱文学資料総合データベースのいくつかの柱となる各種の中国演劇、芸能のデータベースを新規に構築または拡充していく。現在、サーバーにアップしているのは中国伝統芸能映像資料データベースの検索システムと画像データが主であるが、動画データや脚本などを解読し入力した文字データについても公開できるように準備を進める。文字データについては脚本を横断的に検索できるシステムの開発を目指す。 現地調査を通じた文献資料と映像資料の体系的な収集、整理については、中国中山大学や中国人研究協力者の助力も得ながら、本データベースの基礎資料の中で穴となっている安徽省、江西省にて演劇・講唱芸能および民間信仰の現地調査を実施する計画である。また研究成果の一部を2019年10月に韓国で開催される中国通俗文学に関する国際学会にて発表するほか、2020年度に刊行される『日本中国学会報』に寄稿する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
中国または台湾において私金立替で中国演劇の映像資料および文献資料を購入する計画を立てて申請していたが、台北と上海ではDVDなどのメディアの流通量が予想していた以上に減少しており、予定していた金額分の資料を購入できなかったために繰越金が出たが、次年度に再度、資料購入費用として現地で執行したい。
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