研究課題/領域番号 |
18K00353
|
研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
野村 鮎子 奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (60288660)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 悼亡 / 亡妻 / 行状 / 墓誌銘 |
研究実績の概要 |
本研究は、明清の士大夫が自ら筆を執って亡妻(亡妾)を哀悼した散文、すなわち亡妻行状・亡妻墓誌銘・祭亡妻文を中心に、明清の哀悼文学の特徴を考察することを目的としている。 平成30年度は、明清の亡妻墓誌銘および亡妻行状、祭亡妻文についてその全体量を把握するための調査を行った。明代については研究開始前に『四庫全書』所収の明人別集と京都大学人文学研究所所蔵の明代文集を中心に初歩的な調査を終えていたが、30年度はこれまで調査の及んでいなかった中国国家図書館(北京図書館)などに赴き、調査を進めた。また、国内では国会図書館(関西館)にて、『四庫全書存目叢書』および『続修四庫全書』のうちの明人文集から亡妻墓誌銘および亡妻行状、祭亡妻文を索出する作業を行った。これらの調査の結果、現在のところ、明代では、亡妻墓誌銘151篇亡妻行状57篇、祭亡妻文151篇を収集している。しかし、一方、清代の文集は量も多いことから、まだ調査が及んでいないものが多い。 また、女性墓誌銘/行状の文体に対する金石学者や儒学者の見解の整理を行った。たとえば汪鈍翁が「女子に伝無く謚(おくりな)無きに亦た 奚(なん)ぞ行状を用って為すや」(「与人論墓誌銘篆蓋書」)というように、女性の行状について否定的立場を採る清人は多い。黄宗羲、閻潜丘、顧炎武など清の金石学儒学者の見解を調べつつ、清の学者が文体としての亡妻行状をどのようにとらえていたかを整理した。 このほか、本研究の背景となる明清士大夫の文化史について論じた李孝悌氏の論文集の翻訳と監訳を行い、10月には李孝悌氏を招聘して奈良女子大学にてシンポジウム「明清文化研究の現在」を開催し、研究交流を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
明清の亡妻墓誌銘および亡妻行状、祭亡妻文を収集する作業は、電子データの検索によって索出できるものではない。亡妻墓誌銘/行状/祭文は、その標題に「亡妻」「亡室」とあれば、士大夫が亡妻のために書したものであることは明らかだが、「〇〇夫人」または「〇氏」とのみ題されている場合も多いからである。そのため、調査に手間と時間がかかる。また、清代の文集は量も多く、所蔵機関が各所に分散しており、国内出張の必要があるが、平成30年度は勤務先の大学の業務が多忙で、思うように出張の時間がとれなかったという事情がある。
|
今後の研究の推進方策 |
清代の文集は量も多いことと、所蔵機関が各所に分散していることから、叢書を閲覧するのが最も効率がよいと判断している。現在、清代の文集の叢書としては、『清代詩文集彙編』(4058 種、全800冊、上海古籍出版社)、『清代詩文集珍本叢刊』(全600冊、国家図書館出版社)、『清文海』(全106冊、国家図書館出版社)が公刊されている。しかしながら、これらの大型図書は大変高価であり、日本には所蔵している機関が存在しない。そのため、次年度以降は、これらの大型叢書をすべて所蔵している台湾中央研究院の文哲所図書室と傅斯年図書館に赴き、調査を行うことを計画している。これによって、清代の亡妻行状、亡妻墓誌銘の索出作業が進むことが期待される。
|