研究課題/領域番号 |
18K00353
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
野村 鮎子 奈良女子大学, 人文科学系, 教授 (60288660)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 悼亡 / 聘妻 / 舒夢蘭 / 『花仙小志』 / 哀悼 / 亡妻 |
研究実績の概要 |
本研究は、明清の士大夫が自ら筆を執って亡妻(亡妾)を哀悼した散文、すなわち亡妻行状・亡妻墓誌銘・祭亡妻文を中心に、明清の哀悼文学の特徴を考察することを目的としている。 令和元年度は、これまでの研究の成果の一部をまとめて口頭発表を2件行った。1つは秋田大学で開催された第68東北中国文学会における「明清における亡妻哀悼散文の展開」、もう一つ1つは香港中文大学で開催された国際学術シンポジウム「新文化史視野下的明清、民國文學研究―反思與前行」の「明清亡妻行状與士大夫心態」である。 また、8月~9月にかけて、台湾の中央研究院文哲研究所図書室および傅斯年図書館、国家図書館にて、清代の哀悼散文の全体量を把握するための調査を行った。その結果、『清人詩文集彙編』(4058 種、全800冊)、『清文海』(全106冊)、『北京図書館古籍珍本叢刊』清代別集の部、『南開大學圖書館藏稀見清人別集叢刊』、『北京師範大學圖書館藏稀見清人別集叢刊』、『天津圖書館珍藏清人別集善本叢刊』、『續修四庫全書』(清別集第1390~1577)について、ほぼ一通りの調査を終えることができた。 さらに調査の過程で、清の詞人舒夢蘭(1759~1835) 『天香全集』十二種の中に、舒夢蘭の聘妻(いまだ嫁がずして亡くなった婚約者)郎玉娟(1764~1786)に関する舒夢蘭とその友人らによる哀悼詩文を輯めた『花仙小志』があることを発見し、これについての研究をすすめ、論文として発表した。この論文では、『花仙小志』の舒夢蘭とその周辺士大夫の悼亡の作品をとりあげ、友人の婚約佳話とそれに続く友人の聘妻の死が仙女崇拝と相俟って才子佳人の物語に変化していく過程を追いながら、清代士大夫の聘妻の悼亡に対する心性と文学のありようを考察した。これによって、清代には悼亡文学の対象が亡妻や亡妾のみにとどまらず、聘妻にも及んでいたことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調であるが、新型コロナウィルスの影響により、2~3月に予定していた日本国内の清代文集の調査は中止せざるを得ず、旅費の一部を令和2年度に持ち越すことになった。
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今後の研究の推進方策 |
清代の文集は量も多いことと、所蔵機関が各所に分散していることから、叢書を閲覧するのが最も効率がよい。しかし、これらの大型図書は大変高価であり、日本には所蔵している機関が存在しない。そのため、令和元年度は、これらの大型叢書をすべて所蔵している台湾中央研究院の文哲所図書室と傅斯年図書館に赴き、調査を行ったが、一部、再調査が必要な叢書も残っている。また、叢書に未収録の清代文集については、中国と日本の各地の図書館で調査をする必要があるが、今後、新型コロナウィルスの影響で国内外の出張が難しくなることが予想される。令和2年度は現在まで蒐集した資料を整理することに注力したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2~3月に日本国内の清代文集所蔵機関に調査に赴く予定であったが、新型コロナウィルス感染症の拡大で、出張の計画を中止せざるを得ず、旅費が残余となった。今後、出張可能になった時点で、予算執行する予定である。
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