研究課題/領域番号 |
18K00355
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
秋吉 收 九州大学, 言語文化研究院, 教授 (90275438)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 中国近代文学 / 日本近代文学 / 魯迅 |
研究実績の概要 |
実績として、一年間に以下、分担執筆による共著が1冊、それに2篇の学術論文及び1篇の研究ノートを執筆した。共著:『日本漢学中的上海文学研究』(王光東他編 2021年10月、上海遠東出版社刊)分担執筆「成ホウ吾与魯迅『野草』」では、近代中国文壇の代表的作家組織「創造社」と魯迅の関係について、新しい視点から従来の見解を矯正した。論文「魯迅与北京星星文学社『文学週刊』」(『「魯迅誕辰140周年“魯迅与現代文化価値重建”国際学術研討会(第六届紹興文化峰会)」論文集』 2021年9月)では、これまで殆ど注目されなかった文芸誌を北京大学図書館から発掘、そこに秘められた魯迅を巡る当時の文壇の確執の実際を明らかにした。「「散文詩人・徐玉諾と魯迅『野草』」再論―文学上の交流、エロシェンコそしてカール・ヨネダ(米田剛三)」(『言語科学』第57号 九州大学言語文化研究院 2022年3月)では、北京大学でエスペラントを講じた反体制派のロシア盲目詩人を巡り、魯迅と周作人に徐玉諾そして日本のプロ文士米田剛三の出会いとそして別れについて仔細に論じた。研究ノート「山上正義訳「阿Q正伝」について―【国際プロレタリア叢書】(1931)と『大魯迅全集』(1937)の二種の翻訳(附:耿庸「胡風宛書簡」発見と楊逵の使用した版本についての補足)」(『言語文化論究』第47号 九州大学言語文化研究院 2021年10月)では、魯迅の代表作「阿Q正伝」の日本及び台湾における翻訳状況について、新発見資料に基づいてレポートした。「関於紹介給台湾的“両種”『阿Q正伝』」(『魯迅研究月刊』2021年第10期(総第474期)【紀念『阿Q正伝』発表一百周年】 2021年10月)は、中国の代表的魯迅研究誌の外国人による研究特集に採録された拙文である。このほか、3回の国際学会発表を行った(詳細は「研究発表欄参照」)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度も引き続きコロナ肺炎の影響下であったが、当該研究に関して、共著(分担執筆)による出版が1冊、学術論文2篇のほか、研究ノートなどの関連研究を提出できたことは一定の評価と見なせよう。また、すべてオンラインでの参加であったが、レベルの高い国際学会に招聘されて3度の発表を行ったことも、特に有意義な研究活動として数えられる。「魯迅与北京星星文学社『文学周刊』─以周霊均『サン詩』為線索」(中国魯迅研究会主催『紀念魯迅誕辰140周年“魯迅与現代文化価値重建”国際学術研討会』 於中国 紹興文理学院 2021年9月25日)、「現代中国対日本大正文壇的訳介与接受」(『第3回山東論壇 文明互鑑:東亜人文交流与相互認知』 於山東大学青島校区 2021年10月10日)、「創造社的三個“批評家”―囲繞成ホウ吾与魯迅的論戦」(『創造社百年紀念学術研討会』 於中国 中国人民大学 2021年12月11日)。 ただ今年についても、特に研究資料収集の面では、中国その他の研究機関へ赴くことは殆ど叶わず、それに伴って、研究計画遂行にも少なからぬ影響が生じたことは極めて残念なことであった。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ肺炎の影響で進んでいない資料収集面を重点的に保管し、今後も引き続き、各雑誌・メディアに掲載された日本文学翻訳・紹介、また出版刊行された日本文学翻訳単行本を徹底的に渉猟する作業を進める。それぞれの日本作家の翻訳、評論文章の著者について可能な限り探索し、日本語、日本文学との接点、また同時にその周辺(文学傾向、活動)の状況についても、詳細な調査を進める。そうした調査を通じて、日本近代文学が、中国における異なる文学観、歴史、制度の中で、どのように受容され、異化されていったのかを究明する。また、各作家・作品に対する中国(及び台湾)での評価が、日本での評価とどのように異なるかにも注目しつつ、中国(台湾)と日本の文学観、引いては民族、文化基盤の相違について考察を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:【現在までの進捗状況】に記したように、前年度に保留としていた、国内・海外の研究機関を集中的に訪問して、実地調査、現地でしか得られない資料を徹底的に収集する予定が、引き続くコロナ肺炎蔓延の影響で、その殆どを中止せざるを得ない状況になった。次年度へと繰り越して有効的に使用する予定である。 使用計画:今年度の計画を後ろ倒しで次年度に繰り越すと共に、当該研究に活用していきたいと考えている。
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