実績として、この一年間に以下、分担執筆による共著が1冊、それに2篇の学術論文及び1篇の「近現代文学 学会展望」を執筆した。共著:『本味何由知―<野草>研索新集』(Gao元宝編 2022年8月、復旦大学出版社刊)は、近代中国文学の父と称される魯迅の代表作『野草』の誕生90周年記念国際シンポジウムを基礎として編まれた最新の学術研究書である。執筆者には中国を中心として、各国から代表的な魯迅研究者が名を列ねる。研究遂行者の分担執筆「魯迅《野草》得名試論」では、『野草』について、その成立過程から仔細に調査を行い、新発見資料を駆使して従来の見解を矯正した。また論文「魯迅与日本大正文壇―以佐藤春夫為線索」(『紹興文理学院学報』第42巻第11期[総第361期] 2022年11月)では、魯迅文学との関係は数多く論じられつつも外枠に留まっていた佐藤春夫との関係を端緒として、『文章倶楽部』や『中央文学』等の雑誌を始めとした周辺の原資料を改めて徹底的に渉猟することで、佐藤や芥川等の著名作家以外に、魯迅は少なからず無名作家にも注目し、自己の文学に溶かし込んでいた事実を発見した。こうした日本(大正)文学と魯迅文学の想像以上の深い関係は、中国の研究界にも一定の衝撃を以て迎えられることになった。またこの年には、日本における中国研究の中心雑誌『日本中国学会報』(第七四集)の「2021年 学界展望【文学・六 近現代文学】」を執筆し、一年間の研究動向を総覧した。このほか口頭発表・講演として、3回の国際学会発表を行った(詳細は「研究発表欄参照」)。
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