研究課題/領域番号 |
18K00360
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
松浦 周子 (豊田周子) 名城大学, 外国語学部, 准教授 (10749807)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 台湾女性文芸 / 戦後初期 / 在日台湾人文学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、これまで台湾文学研究においてほとんど顧みられることのなかった「戦後初期台湾における女性の文学的営み」を発掘し、文学史的に評価することにある。 本研究は次の四点についての解明を目標としている。:(1)戦後初期台湾の女性文芸の全体像を明らかにする。(2)戦後初期の台湾女性による文芸作品を分析し、当時の台湾新女性の主体性の一端を明らかにする。そして、(3)これらの女性文芸にみられる女性表象と、同時代の台湾男性作家の作品にみられる女性表象とを比較しその差について考察する。また、(4)同時代の日本・中国・朝鮮といった、台湾に隣接する諸地域の女性文芸とも比較し、戦後初期台湾の女性文芸の個性を明らかにする。 本研究は、三年間を研究期間として予定している。:一年目(H30年)の今年度は、前半期において、これまで進めてきた戦後初期台湾の女性文芸が掲載された雑誌紙の調査を引き続き行い、その欠を補った。後半期には、戦後初期台湾で活躍した台湾女性作家・陳蕙貞(1932~2005)による日本語長編小説『漂浪の子羊』について、台湾女性の主体性をうかがうべく、作中に登場する女性形象に考察を加えた。ここにおいて、在日台湾人女性という新たな視角から、同作品を検討する必要があることに気づかされた。また、台湾の戦後初期の女性文芸と、その後の1950年代の女性文芸との連続性を探るため、当時台湾で発行されていた有力紙の婦女専門欄の論述についても、台湾大学付属図書館や国家図書館において調査し関連資料の収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は資料調査のほかに、戦後初期台湾の女性文芸を代表する作品について分析し、それをもとに学会報告、そして論文公刊と一連の流れを作ることができた。ただし、資料調査については、学会発表の時期と同時に行ったため、閲覧すべき資料の全体を網羅的に調査できなかったが、十分な成果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、(1)今年度考察した日本語小説『漂浪の子羊』をより多面的に理解するために、作者である陳氏の少女時代の読書体験・学習経歴・生活環境に関して、故・陳氏のご遺族にインタビューを実施したいと考えている。また後半期には、二年目前半期までに得られた成果をまとめ、所属する学会にて研究発表を行う予定である。 (2)同時に、日本・中国・朝鮮における同時代の女性文芸のあり様にも視野を広げ、比較文学的な観点から、台湾に隣接する地域において本研究がどのような位置にあり、その特殊性は如何なるものかを考察したい。
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