研究課題/領域番号 |
18K00364
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
藤野 真子 関西学院大学, 商学部, 教授 (20332653)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 越劇 / 中国演劇 / 戯考 / 唱本 |
研究実績の概要 |
2020年度は新型コロナの流行の影響を受け、当初予定していた中国・台湾へ赴いての資料調査・収集を行うことができず、2019年度までに収集した一次資料の整理・分析に終始せざるを得なかった。 そのうち、上海図書館近代文献部に所蔵され、現地において複写を行った1940年代の越劇唱本(テクスト集)については、現行の上演内容や演出との比較を行うため、内容の読解に取り掛かっている。まだ分析途中であるが、2021年度中には論考を刊行すべく、準備しているところである。また、1930年代末~1940年代にかけての越劇雑誌や新聞についても、論考の補強とすべく、項目の整理・分析を行っている。 対して、2020年度は、越劇と相関性のある周縁の伝統演劇、特に民国期における京劇に関する研究成果をいくつか発表することができた。具体的には以下に挙げたとおりである。 1.(コラム)「連台本戯」(中里見敬・松浦恒雄編『濱文庫戯単図録 中国芝居番付コレクション』p242-243、花書院、2020年12月)/2.(解説)戯単解説18種(同上)/3.(論文、中文)「連台本戯『封神榜』与特刊」(中国『戯曲研究』第113輯p)/4.(論文)「連台本戯『封神榜』と特刊」(中里見敬編『中国戯単の世界』p189-206、花書院2021年3月)(3の日本語版)。特に、上記2は越劇単独のものこそなかったものの、解説を行った上海の戯単・戯報の中には、江南地区地方劇の上演状況を記録した大規模遊楽場のものが見られ、本研究にも資するところが多かった。 なお、一次資料の入手は物理的に困難ではあったが、近年刊行された民国期演劇に関する新聞・雑誌のリプリント資料、および関連する研究書籍などは国内において購入することが可能であり、本研究の推進、および補足に資するところとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍による本務多忙のため、物理的な遅れは否めず、一年の期間延長をせざるを得なかったが、その点を差し引けば、資料収集状況および論考作成に向けた準備は、おおむね順調に進んでいるといってもよい。 2021年度も海外へ赴いての調査は新型コロナの流行状況に鑑みるとあまり現実的ではないが、少なくとも現状入手済みの資料の分量とバリエーションは、万全とはいかないものの、当初の研究目標をある程度達成することが可能なレベルであると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、2021年度も海外での資料調査は困難であることが予想される。よって、収集済みの資料(唱本、雑誌等)の最終的な整理・分析に傾注し、論考の刊行を準備することとする。 また、越劇を中心に扱うこと自体に変更はないが、将来的に同時代の江南地区他劇種における類似資料との比較分析を行う際の手掛かりとすべく、資料の言語的特徴、出版物としての形態、読者層の傾向などに目配りし、民国期江南地区、特に上海の演劇環境における位相を抽出することに重点を置く。他方、通俗文芸の一分野として、越劇唱本をいかに位置づけるかということも検討を行う。 なお、可能性は高くないが、国内における同系資料の所有・所蔵についても、個人レベルを含めて渉猟を試み、収集済み資料の補填としたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:コロナ禍により本務が極めて多忙となり、2020年度は十分な研究時間を取ることができなかったため。 使用計画:2021年度は可能であれば上海、もしくは台湾へ赴き、資料調査を行う。不可能であれば、書籍や複写物などの関連資料の収集に充てる。
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