研究課題/領域番号 |
18K00366
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
馬籠 清子 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (60463816)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 古代 / ルネサンス / 宇宙観 / モダニズム / 四重奏 |
研究実績の概要 |
これまで通り、研究成果を、海外の厳密な査読付き出版物を通して発表することに力を入れた。具体的には、アメリカで、査読付き論文(研究書の章)がひとつ出版された。“Vladimir Nabokov’s American Short Story Surrounded by the Image of Russia: ‘The Vane Sisters’ in Nabokov’s Quartet Interacting with Nathaniel Hawthorne’s ‘Young Goodman Brown’.” Connections and Influence in the Russian and American Short Story. Eds. Jeff Birkenstein and Robert C. Hauhart. Lanham: Lexington Books, pp.173-85である。
また、ドイツで、全ての審査を終え、学術誌への論文掲載が決定した。“The Symbolism of the String Quartet in Thomas Mann’s Doctor Faustus.” Symbolism: An International Annual of Critical Aesthetics, Vol. 22(2022年出版予定)である。
さらに、英語での執筆による海外での出版に加え、日本語でも論文に取り組み、出版に向けて調整を重ねた。『日常のかたち--美学・建築・文学・食』(山口惠里子・対馬美千子編、筑波大学出版会)の章となる「ピアノのお稽古とその影響力--作家になったアメリカの少女たち--」(2022年出版予定)である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資料の収集をはじめとし、その精読や分析、論文執筆が、ほぼ予定通りに進んでいる。特に、本研究課題で注目する作家のうち、一昨年度から、アメリカ人作家Carson McCullersとロシアからヨーロッパを経てアメリカに渡った作家Vladimir Nabokovに焦点を当てた論文を海外で複数出版し、モダニズム期のアメリカ、ロシア/ソビエト、ヨーロッパにおける音楽・文学の関係の一側面を、丁寧に分析することができている。また、2021年度には、Thomas Mannがドイツ人作家としてアメリカ時代に執筆した作品について分析した論文が、査読を経てドイツで出版されることが決定した。これによって、モダニズム期の弦楽四重奏的文学の研究に重要かつ新たな側面が加わり、本研究課題は順調に展開している。
さらに、「ピアノのお稽古とその影響力--作家になったアメリカの少女たち--」の中でも、本研究課題において重要な作家であるMcCullersと彼女を取り巻くアメリカ独自の環境について分析を進め、同時に、本研究課題で次に注目するT. S. Eliotについて、海外の査読付き出版に挑戦する論文を執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
一昨年度までに、Carson McCullersに関する査読付き論文が海外で2本出版され、これから「ピアノのお稽古とその影響力--作家になったアメリカの少女たち--」も出版されるため、McCullersに関する研究のまとめを行う。また、2021年度までに、Vladimir Nabokovに関する査読付き論文も海外で2本出版できているので、Nabokovに関する研究のまとめも同時進行で行う。そして、両作家についての研究を、最終的には本研究課題で扱う他の作家についての分析と統合し、1冊の研究書として出版する準備を進めていく。
また、ドイツでの出版が決定しているThomas Mannに関する論文では、本研究課題で重要な注目点のひとつとなる、古代ギリシャやルネサンス期の宇宙観がモダニズム期の四重奏文学に強く影響しているというダイナミックな歴史的流れを分析している。この点は、本研究課題や最終的な研究書の土台であり、また、結論に直結する部分でもあるので、この論文を出発点として、Mannに関する研究のまとめとともに、本研究課題全体のまとめに向けて分析を深めていく。
さらに、執筆中のT. S. EliotのFour Quartetsに関する論文を仕上げて出版し、本研究を複眼的で深みのあるものにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で、海外での資料収集や学会発表が不可能となってしまったため、旅費として使う予定だった額が次年度使用額となった。
2022年度も、海外渡航による資料収集や学会発表などは難しい状態が続くと思われるが、海外で出版されている研究書や資料をインターネット経由で購入したり、取り寄せたりする際の費用に使うなど、工夫をしていく予定である。
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