研究課題
本研究は、空と核の時代がアフリカ系アメリカ女性作家たちに与えた想像力を解明するものである。様々な歴史家が1940年代に起こったパラダイム・シフトに名称を与えている。例えば、アラン・ヘンリクソンは「航空時代のグローバリム(Air-Age Globalism)」、エドワード・カプランは「航空・原爆時代 (Air-Atomic Age)」などと異なる名前で呼んでいるが、空という空間の重要性への言及では一致している。本研究では、このパラダイム・シフトを記録するアフリカ系アメリカ女性作家たちの作品を「空のアーカイブ(aerial archive)」というタームで呼ぶことにする。「空のアーカイブ」とは、1940年代に顕在化してきた、空から見る・空から描く・空から思考するという文化的実践を記録するテクスト群を意味する。本年度は、第二次世界大戦中のアメリカの航空地図、航空写真、ならびに日本占領期の米軍による航空写真を分析し、トランスナショナルな空の時空間が、文学テクストに描かれる地球という惑星や人種や環境の表象をどのように変容させたかを検証することで「空のアーカイブ(aerial archive)」の概念を理論化した。またユダヤ系アメリカ人Beate Sirota GordonのThe Only Woman in the Room (1997) 、アフリカ系アメリカ人Ethel L. PayneのChicago Defender紙の記事、Douglas MacArthurのReminiscences (1964) といったテクストにおける占領期日本の空と地上(地下)の表象を解明した。これらを現在執筆中の英文の研究書(仮題Aerial Archives)の序章としてまとめた。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Proceedings of the Association for Japanese Literary Studies: Evidence, Transmission, and Inheritance in Japanese Literature and Media
巻: 20 ページ: 3-13
Journal of American History
巻: 108 ページ: 154~154
10.1093/jahist/jaab097