研究課題/領域番号 |
18K00371
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
服部 典之 大阪大学, 文学研究科, 教授 (50172937)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 冒険小説 / 地理学的想像力 / ダニエル・デフォー / ジェイムズ・クック / バウンティ号の反乱 |
研究実績の概要 |
研究実績として一番重要であったものは、日本英文学会関西支部第14回大会シンポジウム『冒険の残滓ーー『ロビンソン・クルーソー』から300年』の司会及び講師を務めて、約300名の学会員の前で、本研究「移動と地政学ーー「イギリス/英語」小説に見る地理学的想像力」の重要性を唱え、深い議論を交わせたことである。本研究の代表者の発表のタイトルは「浜辺の想念――クルーソーの垂直的冒険」であり、冒険小説の代表とされるべき本作品に実はそもそも自らの移動に潜む地政学的疑義が潜んでいたことを明らかにして、このジャンルの根本的見直しが必要だと提言することができたことである。12月におこなわれたこのシンポジウムへの調査研究として、オーストラリアのジェイムズ・クック大学に出張を行い、実録航海記のありようと『ロビンソン・クルーソー』などの架空旅行記の共通性を調べることができた。またMuseum of Tropical Queenslandを訪問することで、実際に起こったバウンティ号の反乱を鎮圧するために派遣されたパンドラ号がオーストラリア沿岸に沈んでおり、その引き揚げと研究の実態を調べることができた。反乱と鎮圧と沈没などの要素は架空旅行記に盛んに取り入れられており、そのことも発表に盛り込むことができた。『ロビンソン・クルーソー』を書いた作家デフォーの『生粋のイングランド人』の翻訳を出せたことも大きな成果であった。様々な民族の出自を持つイングランド人への団結を促し、海外へ出立することをうたった重要な作品であり、本研究とも深い関連を持っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
シンポジウム『冒険の残滓ーー『ロビンソン・クルーソー』から300年』の内容は、本研究の総決算的意味を持つもので、当初考えて計画より、研究は進展している。昨年が2019年であり、『ロビンソン・クルーソー』が出版された1719年からちょうど300周年の周年事業であったため企画されたもので、1年早く実現したわけだが、研究の2年目の締めくくりとしては理想的なものであった。また、『生粋のイングランド人』の翻訳も名城大学の西山徹教授とと共に、本研究の内容に即して企画されたプロジェクトであったが、これも2年目の最後の月に無事出版することができた。
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今後の研究の推進方策 |
シンポジウムが成功したので、その結果を講師が集まって論文集を編纂すべく今後は本研究を推進していきたい。さらなる調査や文献収集に出張を行いところだが、現在2020年5月は新型コロナウィルスが蔓延し、移動が容易ではない。3年の締めくくりとしての最後の調査や資料収集は不可欠であり、場合によっては、本研究をい一年延長しなくてはならない状況になるかもしれない。年度途中でコロナ禍が終焉した場合は、予定通り、調査を終え、論文集を纏め、充実した締めくくりの研究を推進していく所存である。
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