研究課題/領域番号 |
18K00375
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
大野 瀬津子 九州工業大学, 教養教育院, 教授 (50380720)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 大学小説 / 南北戦争小説 / 大学論 / アメリカ文学 / 大学 / 19世紀 |
研究実績の概要 |
1.2021年6月30日~7月2日にスペインのコンプルテンセ大学およびオンラインで開催された"Nineteenth International Conference on New Directions in the Humanities"にて、"Building a Community in a Civil War Novel, Two College Friends"というタイトルの下、オンラインで口頭発表した。本発表では、自ら所属する北軍への忠誠を示すのみならず、敵である南軍の規律に従うため我が身を犠牲にする『二人の学友』(1871)のハーヴァード学生ネッドの行為を、共同体構築の試みとして解釈した。同学会への参加を通じ、大学内部/外部の壁を越えて市民がともに共同体を構築していく必要性について他国の研究者と意見交換することもできた。 2.『ボストンの美女』(1844)、『ネリー・ブラウン』(1845)、『更生させられた学生』1844)についての論考を書き進めた。 3.以下の学術イベントにオンライン視聴・参加した。ラディカル教養講座「大学とは何だったのか:エコールとウニヴェルジテート」(松本卓也×大河内泰樹)、大学史研究会主催のシンポジウム「大学と戦争」、名古屋大学オープン・カレッジ隠岐さやか教授講演会「「学問が役に立つ/立たない」とはどういうことか―思想史から考える」、九州工業大学教養教育院の大山貴稔教員企画の講演会シリーズ「工業大学で涵養すべき『教養』を考える」―第1回「工業教育と『教養』の役割―歴史から学ぶ」(沢井実・南山大学教授)、第2回「デジタルネイティブ世代の教養教育を考える」(大澤聡・近畿大学准教授)。 4.異なる専門分野の研究者と知見を共有する試みとして、中国の留学生政策を研究している九州工業大学教養教育院の李昱教員と研究会を立ち上げ、2回開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本務校での業務が多岐に渡り、研究に割ける時間が限られていたため、本プロジェクトを予定通りに進めるのが困難だった。特に論文の形で成果を公表することができなかったため、「やや遅れている」と判断した。とはいえ、『二人の学友』を扱った国際学会での口頭発表をこなし、『ボストンの美女』、『ネリー・ブラウン』、『更生させられた学生』を二本の論文として投稿する準備をかなりの程度まで進めることはできた。大学研究に関わる様々な学術イベントに参加したり、同僚と研究会を開催したことも大変有益であった。これらの取り組みの成果は、2022年度に学術論文として公表したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は本研究の最終年度となるため、これまでの研究成果を学術論文の形にする。具体的には、『二人の学友』で描かれるネッドの行動を共同体構築の試みとして読み解く論考、『ボストンの美女』と『ネリー・ブラウン』を大学の雄弁術教育の有用性という観点から解釈する論考、そして『更生させられた学生』を大学と監獄の役割という角度で読む論考の3本を、できれば査読付き学会誌に投稿する。これらの論考を通じ、19世紀中葉の大衆小説が大学の有用性の議論にどのように応答しているか、という本研究の問いに答えを出したい。 余裕があれば、『フェア・ハーヴァード―アメリカの大学生活の物語』(1869)について、国際学会で口頭発表したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は2021年6月30日~7月2日のNineteenth International Conference on New Directions in the Humanitiesの口頭発表を、現地スペインのコンプルテンセ大学で行う予定であった。しかし新型コロナ感染症が収束しなかったため、現地行きを諦めてオンライン発表に切り替えた。これにより旅費が生じず、予算を次年度に繰り越すことになった。2022年度は論文執筆のための文献購入と、状況が許せば国際学会への出張費で予算を計上する予定である。
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