研究課題/領域番号 |
18K00377
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
吉本 和弘 県立広島大学, 地域創生学部, 教授 (90210773)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ラファエル前派 / 写真術 / ルイス・キャロル / O. G. レイランダー / ジョン・ラスキン / レディ・ヘイワーデン |
研究実績の概要 |
令和元年度までは、一次資料調査を英国のヴィクトリア・アンド・アルバート・ミュージアムなどで行い資料や文献の収集を行い、成果として年に一本のペースで論文も発表してきたが、令和二年度は4月以降、コロナウイルスの世界規模での蔓延の影響で、予定していた英国および米国での資料調査は一切行うことができなかった。その状況の中、それまでの資料や文献による情報と研究の成果の一部をまとめ、論文「O.G. レイランダーとルイス・キャロル」を『ミッシュマッシュ』(日本ルイス・キャロル協会発行)第22号(2020年11月)誌上で発表した。 また小鳥遊書房から出版した翻訳書、エドワード・ウェイクリング著、『ルイス・キャロルの実像』(楠本君恵、高屋一成、下笠徳次監訳、その他7名との共訳)を出版した。この中で、「写真家」と題する章を担当し、ルイス・キャロルと当時の写真界、あるいは美術界の重要人物とキャロルの交友関係、影響関係についてより深く学ぶことができた。エドワード・ウェイクリング氏は、キャロルの写真についての研究では世界で最も知られた人物で英国ルイス・キャロル協会の長年の主要メンバーである。 令和二年度は海外での資料調査等を行わなかったので、研究費を全く使わない結果となった。コロナウイルスの問題が未だに解決の糸口が見えてこない現状の中、現地調査に変わる方法を模索し、これまでの蓄積を研究成果として発表する方向に向かって軌道修正をしたいと考えている。コロナ問題により、一方で海外の研究者とオンラインで繋がる機会も増えてきたので、新たな方法での調査を進めて行きたい。そしてこれまでの論文をまとめ、さらに書き足して行き、書籍の形で発表するよう努力する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和二年度は、予定していた英国および米国の研究機関、博物館、美術館などでの資料調査や、現地の研究者との交流といったことが一切できなかったので、研究費の使用目的の多くを占める旅費の使用がなかった。また一方で、大学での本務、つまり授業の実施方法がオンラインとなったことによる授業準備、課題処理などに時間を取られるなどの問題のゆえに、研究に向ける時間が相対的に、大幅に減少したと感じている。その結果として研究成果をまとめる作業も滞っているのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間の最初の2年間で収集した資料や文献などを再度、整理し、研究し直し、予定していたがコロナウィルスの問題により実施できていない調査研究の部分は、ネット上の情報、オンラインによる手法などを駆使し、補ってゆくことで研究を進めたい。ルイス・キャロルの写真アルバムについての、これまでの研究成果を踏まえて、O. G. レイランダー、J. M. キャメロン、についての論考を書き進め、さらにラファエル前派主義の画家たち、特にD. G. ロセッティ、 J. E. ミレイ、E. バーン=ジョーンズ、そして理論的支柱としてのジョン・ラスキンらについて考察を加えて行きたい。そして写真の影響関係、写真と文学の影響関係についての論考を書き進めて、なんとか2021年度中に、この研究に一区切りをつけて、全体をまとめて、書籍の形で出版することを目指して行きたいと考えている。 もしも、2021年度中にコロナウイルス問題が沈静化し、英国、米国での調査が可能となるようであれば、実際の資料を調査にゆきたいという希望はなんとか実現したいとも考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は新型コロナウイルスの世界的感染の蔓延の影響で、海外での資料調査、学会出張などが一切実施できなかったため、またこの問題から派生して、大学における教育業務が、オンライン授業実施などの影響で多忙となり、予定していた研究がほぼ止まった状況となった。2021年度中に、海外での調査研究が可能となる状況になれば、できるだけ現地での資料調査を実施した上で研究を継続したいと考えているが、それができない場合は、これまでの調査で得た資料を元に、一旦研究をまとめる方向にむかいたいと考えている。その際には研究結果を発表するための手段としてのHP開設や、ネットでの発信のためのハードとソフトの設備費の方に研究費の一部を使用することも検討してゆきたい。
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