研究課題「ヴィクトリア朝期の写真術と文学とラファエル前派主義芸術の関係性に関する研究」(18K00377)は2018年に採択されたが、コロナ禍の影響によって研究が著しく停滞し2度(計2年あまり、2020年度、2021年度)の延長申請を余儀なくされた。これは主として、英国に存在する19世紀の写真資料やラファエル前派の絵画を実際に現地で調査するための海外渡航がコロナ禍により制限され実施できなかったことによる。2022年末から2023年度の初期あたりから再開して同年に期間を終了した。 2023年夏に最後の資料調査として、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館所蔵のレディ・ヘイワーデンの写真の主なものを実際に調査することができた。これによって当初から研究対象と考えていた写真および絵画資料の7、8割程度を実際に見ることができたと考える。 コロナ禍以前の調査を元に「J. M. キャメロンの写真によるA. テニソンの『国王牧歌』の視覚化について」を2023年3月発行の県立広島大学地域創生学部紀要第2号で発表した。また、レディ・ヘイワーデンについての2023年の調査を元に、2024年3月発行の県立広島大学地域創生学部紀要第3号において論文「レディ・クレメンティーナ・ヘイワーデンの写真における鏡について」を発表した。 これらの論文は本研究課題を最終的にまとめた著作の一部となることを目指した論文であり、すでに発表済みのルイス・キャロル、O. G. レイランダーといった写真家と、ジョン・エベレット・ミレイ、ダンテ・ガブリエル・ロセッティ、ホールマン・ハントなどといったラファエル前派の絵画や挿絵との関係、あるいはアーサー・マンビーの写真コレクションに関する論文等と合わせて、加筆修正を施して出版したいと考えている。その執筆に取り掛かっており、2024年度内の完成を目指している。
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