研究課題/領域番号 |
18K00378
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研究機関 | 藤女子大学 |
研究代表者 |
英 美由紀 藤女子大学, 文学部, 准教授 (40623830)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ポピュラー・ロマンス / チック・リット / フェミニズム / ポストフェミニズム |
研究実績の概要 |
1990年代以降の英語圏における女性向けポピュラー・フィクションのジャンルとフェミニズムとの関係を検討・考察する本研究において、2019年度は、1990年代半ばのイギリスに端を発する「チック・リット(chick lit)」に焦点を当てた。このジャンルはこれまで、現代のポピュラー・ロマンスの枠組みにおいて論じられており、その研究の系譜、とりわけ1980年代以降の「ロマンスのフェミニスト的再評価」に位置づけられると考えられる。また近年このジャンルは、同時期に顕著になった社会経済状況、とりわけポストフェミニズム(やネオリベラリズム)との関連においても議論されており、その代表的な論考(例えば、このジャンルを代表するとされるBridget Jones's Diaryを批判的に考察したAngela McRobbie)も検証した。そのうえでこのジャンルで広く知られているイギリス人女性作家の作品に関する考察を論文としてまとめた。またそこで取り上げたテクストでは、女性の身体美の追求が描かれていることから、それをポストフェミニズムにおける「財」としての身体への焦点化の議論に接続し、これについてのRosasind Gillらの論考を参照しながら論じた。 また昨年から継続中の、所属学会Contemporary Women's Writing Associationの複数の会員との、現代のポピュラー・ロマンスについての研究プロジェクトは、その成果として論文集の出版の準備が進められており、その1章分を担当、執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上の概要に記した海外研究者とのプロジェクトの成果は、Irene Perez Fernandezらを編著者とするRomantic Escapes: Trends in Contemporary Popular Romance Fictionとして出版される予定だが、出版時期については当初の予定に若干の遅れが生じている。 一方、以下に述べる次年度の研究については、基本文献の講読と論点の整理を行うなど、すでに準備を進めている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
1990年代以降の英語圏文学とフェミニズムの関係を考察する本研究の背景として、両者を媒介する「出版」の問題に取り組む予定である。 まず1970-80年代のフェミニスト系出版社の興りと、その後のポリシーと経営の両立において生じた問題について、これまでになされてきた議論を整理する。そのうえでそうした出版社の代表格ともされるイギリスのヴィラーゴ出版(Virago Press)に焦点を当て、同社が女性文学の再興やフェミニズム批評に果たした貢献を、同社の代表的な出版物であるモダン・クラッシクス・シリーズ(Virago Modern Classics Series)等に跡づける。一方、同社の大手傘下への編入後の出版物等について、どのような変化が生じているのか考察する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度予算は主に資料収集にあてたが、一部残金が生じた。これについては、翌年度分予算と合算し、書籍等の物品費、英文校閲委託等の人件費・謝金、学会出張等の旅費として使用する予定である。
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