研究課題/領域番号 |
18K00378
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研究機関 | 藤女子大学 |
研究代表者 |
英 美由紀 藤女子大学, 文学部, 教授 (40623830)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フェミニズム / ポストフェミニズム / フェミニスト出版社 / ヴィラゴ・プレス |
研究実績の概要 |
フェミニズムと(ポピュラー・)フィクションの関連を主題とする本課題において、昨年度から着手した、第二波フェミニズム期以降両者を媒介したフェミニスト出版社の再検証を引き続き行い、論考の後半部を大学紀要で発表した。 そこではイギリスを代表するフェミニスト出版社で、同時期に創業した出版社中唯一今日まで存続するヴィラゴ・プレスに焦点を当て、1980年代以降、同社が大手出版傘下への参入と(再)独立を繰り返した経緯を、当時の社会経済状況や、バックラッシュ、ポストフェミニズムといったフェミニズムの退潮の歴史的文脈に位置づけた。 またこうした一連の経緯に対し、政治的な自律性の観点から、また「フェミニズムの終焉」の象徴でもあるとしてなされた当時の批判を、先行研究に依拠しながら再検証した。まず出版社の「独立性」の想定そのものの妥当性を見直すとともに、同社独自の経営のあり方も考慮した。また今日に至る同社の出版活動や様々な取り組みを、「第三波フェミニズム」、「第四波フェミニズム」とも呼ばれる1990年代以降のフェミニズムの再興と歩みをともにしたものとして、一定の評価の対象とした。 フェミニスト出版社の興隆は、第二波フェミニズム期のイギリスに限定されるものではないことから、この研究テーマを時間的、空間的に広がりをもつものとして発展させていく可能性も示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度から着手した、フェミニズムと(ポピュラー・)フィクションを媒介したフェミニスト出版社についての考察は継続的に行ったが、フィクションそのものについては、議論の対象とする作家群の選定と共通して見られるテーマの抽出にとどまり、その考察や研究成果の発表は、次年度に持ち越すこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
第二波フェミニズムを広く一般に知らしめる媒体ともなったとされる(ポピュラー・)フィクションについて、とくにMad Housewife Novelと総称される英米の小説群に焦点を当て、それを性別役割の問題化との関連において考察する予定である。それにより、第二波フェミニズム以降、現在までのフェミニズムとフィクションの関連について、体系的に捉えることができると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
出席を予定していた学会がオンライン開催となり、出張旅費を使用しなかったため。
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