研究課題/領域番号 |
18K00384
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
庄司 宏子 成蹊大学, 文学部, 教授 (50272472)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アメリカ文学 / 建国期アメリカ / カリブ海地域 / 奴隷制度 / フィラデルフィア |
研究実績の概要 |
本研究はEmmanuel Wallersteinの世界システム論の影響で文学を国民国家の枠組みではなく、その時代の世界システムで捉える世界文学の捉え方にシフトする方向に示唆を受けている。しかしながら、昨今のCOVID-19の世界的感染の広がりやロシアによるウクライナ侵攻は、国民国家が文学に与えうる影響力の大きさを改めて認識させている。文学が国家(他国を含め)の強大な影響力のもとで想像/創造されるものであり、国家の力に対する共鳴・共働とともに、抵抗の可能性も秘めていることを視野に入れ、国家と文学との関わりを問う研究は重要である。本研究は、18世紀末から19世紀初頭のアメリカ建国初期に描かれるCharles Brockden BrownやLeonora Sansayの小説、当時のアメリカ合衆国の首都であり貿易港でもあったフィラデルフィアを舞台とする物語を、独立後のアメリカの国内情勢と対外情勢の双方から読み解きたいと思う。港町としてカリブ海地域や西方へと開かれた国境で繰り広げられる物語は、フランスやスペインなどの植民地大国との勢力争い、奴隷制度をめぐる人種政策、政体や産業など未来の国家のビジョンと戦略が露わになるものである。Brownの小説、またSansayの小説Laura, by a Lady of Philadelphia (1809)及びThe Zelica, The Creole; A Novel (1820)をそうした観点から読み解き、描かれた共和制国家の台頭とそのもとで生きる人々の関わりを分析することで、建国期アメリカの形成とこの時代に文学が果たした役割を考察したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Charles Brockden Brownのゴシック小説Wieland: or, The Transformation: An American Tale (1798)を建国期アメリカの国外から入ってくる危険分子が醸成する不安や恐怖の対象を描いたものとして読み解き、当時のフランス領植民地サン=ドマングやルイジアナを舞台とするLeonora Sansayの小説と対象させることで何が浮かび上がるか、検討しているところである、
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今後の研究の推進方策 |
Leonora Sansayは18世紀末の仏領植民地サン=ドマングにおける奴隷反乱を当地に滞在し、その体験を後のアメリカ副大統領 Aaron Burrに書き送った人物であり、その文学の視野は当時フランス領であったルイジアナをめぐる状況と深く関わるという地政学的視野を有している。現在、紙媒体で入手できないSansayの文学をマイクロ資料としてUCバークレーで入手することができたため、今後研究を有意義な形で進めることができると考えている。また海外で開催される学会や研究会に参加して、最新のアメリカ文学研究の動向を視野に入れて研究したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた海外の学会への参加が学内業務日程と重なり執り行うことができなかった。次年度はUC Berkeleyなど海外の大学の図書館での資料収集や学会や研究会の参加を行いたく思っている。また研究に必要な書籍やPCなどのデバイスの購入も予定している。
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