最近の文学研究の潮流として、文学を国民国家の単位ではなく、世界文学の視野から捉える動きがある。世界文学の観点からの文学の見直しは、その文学が描いている現実や歴史的経緯、登場人物の描写がひとつの国の射程に収まらないようなディアスポラの文学において有効である。19世紀末のアメリカ建国期において奴隷反乱の難を逃れてサン=ドマング(現ハイチ)から渡ってきたディアスポラ移民の存在がアメリカ社会のなかでどのような文化的創出をもたらしたのか、その文学的表象から解明を試みた。またディアスポラ文学としてアフリカの現代アメリカ文学のガーナ系作家であるナナ・クワメ・アジェイ=ブレニヤーによる文学も取り上げた。
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