研究課題/領域番号 |
18K00392
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研究機関 | 関東学院大学 |
研究代表者 |
中村 友紀 関東学院大学, 経営学部, 教授 (80529701)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 暴力 / 倫理的反価値 / 美学的反価値 / 復讐劇 / ルネサンス / セネカ / スケープゴート / イギリス演劇 |
研究実績の概要 |
2020年度の研究成果:(1)近代初期復讐劇の暴力表象の典型を分析し、学会にて論文発表した。暴力表象の倫理的・美学的な正価値と反価値のルネサンス的特徴を分析し、さらに典型的暴力表象が現代の表象文化にも継続しつつも倫理的・美学的な価値づけが近代初期と異なる点を分析した。論文“Renaissance Dramatic Convention of Representing Violence and Its Modern Continuation: Titus Andronicus and Death Wish”として2020年9月London Centre of Interdisciplinary Research主催の学会Violence and Society(当初予定於:ロンドン大学バークベックカレッジ大学がオンライン開催に変更)で口頭発表。(2)近代初期復讐劇が、コミュニティ救済のスケープゴートの表象に近代的個人の概念が含まれる点を分析し、論文“Modernity of the Scapegoat Ritual in Early Modern English Revenge Tragedy”を2020年12月London Centre of Interdisciplinary Research主催の学会Play, Masks and Make-believe: Ritual Representations(当初予定於:ケンブリッジ大学がオンライン開催に変更)で口頭発表。(3)論文“Horror of Dehumanization: The Ethical and Aesthetic Boundary in Early Modern English Revenge Tragedy”を『経済系』282号(2021年3月)に掲載(pp.160-169)。近代初期復讐劇におけるルネサンスの倫理的・美学的価値観が忌避するものの表象を分析。(4)上記(1)の論文を“I Have a Dream”: From a Culture of Violence to a Culture of Nonviolence (Interdisciplinary Discourses: London, 2021)に第1章 (pp.21-37) として掲載。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた海外の図書館や古文書館での資料調査ができず、先行研究が扱ってこなかった史料を探り当てて活用することができなかったものの、デジタルで入手できる資料や二次資料を活用しながら、今年度解明する予定であった暴力についてのルネサンス的認識を分析することができた。また、感染症蔓延の影響により参加予定だったカンファレンスが中止や延期になったものの、オンライン開催されたカンファレンスでは予定通りに口頭発表を行うことができ、その成果は海外の出版物に掲載された。延期になったカンファレンスで発表予定だった論文の代わりに、新たな論文を完成させて学術誌に掲載したので、当初の成果の目標予定数を下回ることはなかった。感染症蔓延の影響はあったものの、他の形で埋め合わせ、また当初の予定にはなかった新たな成果を出すこともできたため、当初の計画以上に進展させられたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、近代初期復讐劇が表象する、ルネサンス的な倫理的・美学的価値観が忌避する反価値の表象を、引き続き分析する。特に、ルネサンス的な人間の概念の古典からの影響およびその近代性といえる特徴を検証し、同時に、近代初期表象文化が生み出した非人間性の表象のコンベンションが現代に継承されつつも、現代人の価値づけが近代初期人とは異なる点を探る予定である。現状では、当初予定していた新たな史料の海外調査が不可能となる見込みが高いが、デジタルで入手できる資料や二次資料を活用して、分析対象のテクストや分析の際に論拠とする材料を確保する予定である。成果発表については、オンライン開催に変更された海外の学会での発表が予定されており、また、完成した論文を学会誌等に投稿する予定である。なお、本来の研究計画の重要な点は、希少な一次資料から研究上の根拠あるいは分析対象を獲得することであったので、今年度中に海外への渡航が可能な状況になれば、海外の図書館あるいは古文書館でそうした資料を入手する可能性もある。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、2021年度使用額は400,000円を予定していたが、2020年度は感染症蔓延の影響により海外での調査および学会参加の予定がすべて実施不可能であったため394,985円が残り、それらを合わせた704.985円を2021年度に使用することとなった。この財源は、21年度に参加する予定の学会参加費、資料購入の経費、備品購入の経費、海外の学会との通信費、英語論文の校正費などに支出する予定である。また、21年度中に海外渡航が可能になった場合、海外での調査や国際学会参加のための交通費として支出する可能性もある。
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