研究課題/領域番号 |
18K00393
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Atlantic Canada / literature / consumer culture |
研究実績の概要 |
2019年度の研究成果は以下の通りとなる。まず、『カナダ文学研究』27巻において、論文“Writing the Commodity: Atlantic Canadian Writers and Postmodern Consumer Culture”を掲載した。この論文は、ポストモダニズム時代、つまりは1990年代と2000年代に活躍した二人の作家について論じたものであった。そこでは財と土地利用、廃棄物の環境的影響を巡る消費と社会的地位を問う少数派作家について検証した。また、Hisaye Yamamoto、Michael Winter、Alexander MacLeodについての研究発表を4件行った。さらに、2019年の6月にはノヴァスコティア州出身のAlexander MacLeod氏(セントメアリー大学ファリファックス校)を中京大学と日本カナダ文学会に招聘した。彼の滞在中、感情労働、情動、現代カナダの短編小説に関するテーマについて議論することができた。2019年7月には、MacLeod氏と一緒に、関西大学で開催されたイベントで共感と短編小説に関する特別講演を行った。この講演を通じて、感情労働、私生活の商品化といったテーマにまで当該研究の範囲を広げることが可能となった。 2020年3月には名古屋大学との共催のコンフェレンスにおいて、Melody Jue教授をゲストスピーカーとして招聘した。そのとき私も研究発表を行い、Jue教授からは消費、インフラ、環境に関するテーマについて貴重な意見を頂いた。 しかし、2020年5月に大西洋カナダ研究学会のコンフェレンス(年二回開催)で、感情労働、とりわけ在宅医療の商品化に関して発表する予定であったが、新型コロナウィルス感染症の世界的な拡大によりキャンセルとなった。また、当該研究テーマと直接的には関係ないが、2019年の紀要『国際英語学』25巻において、ケベックの映像様式と社会変化に関する論文を執筆したことも付け加えておきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在のところ(2020年3月まで)、大西洋カナダ作家の北米消費文化への反応に関する私の研究は、当初予定していた通りに進んでいるといえる。これまで、私は、カナダの現代作家たちや研究者たちとの知的交流を通して、当該研究テーマやそれに関する研究アプローチを深化させてきた。とりわけ、Alexander MacLeod とMelody Jueとの交流は私の研究に大きな影響を与えてきた。しかしながら、今回、世界規模での新型コロナウィルス感染症の拡大により、私の研究計画は変更せざるを得なくなったことも事実である。たとえば、例年、年二回開催される大陸カナダ研究学会のコンフェレンスで、私は研究発表をする予定であった。今年は2020年5月にメイン大学ベルファースト校で開催される予定であったが、キャンセルとなってしまった。予定していた発表は、Lynn Coadyが最近出版した作品 Watching You Without Me (2019)に関するものであった。しかし、こうした中、現在、『カナダ文学研究』27号で記載された論文で探究したテーマを引き続き検証しようとしている。現在は、そのテーマと関連した2編の論文を執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス感染症の世界的な拡大により、2020年5月にメイン大学ベルファースト校で行う予定であった研究発表はキャンセルとなった。また、2020年6月には、二人のカナダ作家(Lisa Moore とEva Crocker)を日本に招聘し特別講演と研究会を開催する予定であったが、それらもキャンセルとなったことを述べておく。 2020年度は、『カナダ文学研究』で論文を掲載する予定である。その論文は、同学会誌27号で掲載された論文“Writing the Commodity: Atlantic Canadian Writers and Postmodern Consumer Culture”で検証したテーマを発展させたものであり、作家としてはDonna Smythに着目したものとなる予定である。その論文はまた単行本の一章となることができればと考えている。今回、論文をもう一点出版したいと考えており、それも『カナダ文学研究』27号で掲載された論文が土台となる予定であるが、Lynn Coadyの短編におけるジェンダーの側面と消費実践の批評に着目した論文になると考えられる。その論文は、カナダの国際学会誌、たとえばStudies in Canadian Literature等に投稿したいと考えている。さらにもし可能ならば、3点目の論文も出版したいと考えている。その論文は、2019年に行った二つの研究発表が土台となったものになると考えられ、ニューファンドランド出身の作家Michael Winter に焦点を当てられた論文となる予定である。ちなみにそれら二つの研究発表は、人民、私有地、国土管理の民営化と共に消費実践、浪費、環境に関する問題を探究したものであった。 もし、2020年の秋に海外渡航が可能となるならば、トロント大学、ニューブランズウィック大学、ダルハウジー大学、ソバスコシア公文書館に資料収集に行きたいと考えている。
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