本研究は20世紀後半以降のアイルランド小説における移民の姿が、20世紀初頭から現在に至るまでどのように変化し、またいかなる社会的要因がアイルランド人作家の想像力に影響を与えてきたのかを、歴史的視点を踏まえて考察したものである。アイルランド移民の実情は、生活苦から逃れ新天地を求めた時期の移民から、より豊かな生活を得るため自発的に祖国を離れた移民まで、その姿は多岐にわたる。そしてアイルランド社会が成熟するにつれ、移民の姿もより等身大に近いものとなり、アイルランド人作家の移民への態度も変容していく。本研究ではアイルランド人作家の負の歴史に対する冷静な視点を読み解き、現代の社会問題と関連づけた。
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