研究実績の概要 |
本年度は、コールリッジの晩年の作品であり、彼の思想が最も包括的な形で表明されている『省察への導き(Aids to Reflection, 1825, 1831)』と『教会と国家の構成について(On the Constitution of the Church and State, 1829, 1830)』を対象に、コールリッジの理性論と信仰の関係についての思想の形成過程において講演が果たした役割について研究を行った。 1818年の哲学講演、文学講演のためにコールリッジが残したノート・ブック、書簡、書物への書き込みを参照しながら、それらと講演が、この後期の二つの著作へと発展していく過程について確認した。書籍の読者ではなく、目の前にいる聴衆に向けて講演を行うという機会が、コールリッジにとって信仰についての哲学的考察の機会となっただけではなく、聴衆の反応を直接感じることができたという点においても、その後の執筆に与えた影響は、予想していたよりも大きいと考えられるので、その点に着目して2021年度も研究を進めていきたいと考えている。 講演が行われた場所や会場のサイズなどについても念頭において研究を行いたいと考え、当初は、コールリッジが講演を行った会場を現地で確認しようと考えていたが、コロナの流行のためにそれはかなわなかった。その分、コールリッジの著作のスタンダード・エディションを検索性に優れた電子書籍版で購入し、当時の状況をより詳細に把握するために19世紀の宗教、哲学、社会に関する研究書も、コールリッジを対象とした研究書とあわせて購入した。
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