研究課題/領域番号 |
18K00403
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研究機関 | 北九州工業高等専門学校 |
研究代表者 |
中村 嘉雄 北九州工業高等専門学校, 生産デザイン工学科, 准教授 (40346739)
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研究分担者 |
小笠原 亜衣 関西学院大学, 法学部, 教授 (60440202)
塚田 幸光 関西学院大学, 法学部, 教授 (40513908)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | クロスメディア / アメリカ / 優生学(優環学) / 工業デザイン / 表象文化 / 視覚芸術 / ニューディール |
研究実績の概要 |
本年度の研究成果として、研究代表者の中村は、実証課題である、ニューディール期の工業デザインへと再回収される優生学(優環学)的「身体」について、その検証と理論化が順調に進んだ。まず、工業デザイナー、ヘンリー・ドレフュス考案の機械的人体見本 「G.I.ジョー」と優生学的「身体」研究の前提として、19世紀以降のアメリカ民兵と優生学との関連を実証した。その成果が「国際ヘミングウェイ学会」(パリ)の報告("Eugenic Connections on the Western Front: Two Types of Soldiers in the First Vignette of In Our Time")と、共著『アメリカン・モダニズムと大衆文学』(金星堂)の論文「優生学とヘミングウェイ─人種的レトリックの「大衆」戦略」へと結実した。また、雑誌『ヴォーグ』1939年2月号の、工業デザイナーのモードファッションを起点に優生学的「身体」と「機械」とのつながりを実証。その成果を近日出版予定の共著論文に発表する。また、パリ郊外にある、工業デザインに大きな影響を与えたル・コルビュジエの「サヴォア邸」の現地調査を行い、「身体」と「機械」との接点を実証する例を確認した。 各研究分担者も順調に成果を上げている。塚田はニューディール期の文化形成におけるドキュメンタリーの意義、スタインベックの『怒りのぶどう』におけるFSA写真プロジェクトとの関連に関する共著論文を発表、また、30年代の戦時政策と映画との関係について国際会議で報告し、ニューディール期のメディアにおける優生学的残響研究の理論的足がかりとなる成果を提出している。小笠原は、20年代におけるヘミングウェイと「視覚芸術芸術」との関係について国際会議で報告し、未来派芸術とニューディールのテクノクラシーへとつながる理論的な視座を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画以上に研究が進んでいる理由として、「衣服」を起点とした、工業デザインと優生学との親和性の実証研究が、「身体」、「機械」、「優生学」の3つを一つに結びつける視点として有効であり、その実証が順調に進んだ点が大きい。そして、この「衣服」の視点は、映画、写真、絵画といった視覚芸術との関連も深く、研究分担者の実証研究にかんしても想定以上の進展と予測されるからである。
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今後の研究の推進方策 |
今年度得た成果は、研究代表者およびその研究分担者の実証研究を進展、充実させる可能性を多分に含んでおり、今後の研究の検証範囲を広げ、かつその精度を増すことができるように、今まで以上に、研究で得た新しい視点や情報の共有を密にしながら互いの研究を進める。また、国内外の研究にも積極的に参加し、そういった成果や視点の有効性を確認し、本研究へフィードバックさせるとともに、最終的に本研究の成果を共著書として公表できるように準備を進めていく。
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