研究課題/領域番号 |
18K00406
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
齋藤 一 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (20302341)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Edmund Blunden / ブランデン / 長崎 / 原爆 / 日本遍路 / 文化政策 / 冷戦 / ブレイク |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度に引き続き、新型コロナ禍による移動制限や、長崎市・県の大学・公共図書館における、他県者在住者による長時間の資料閲覧の制限または禁止により、英国の詩人で被爆した長崎において、英国政府の文化政策の一環として講演をおこなったエドマンド・ブランデンなどについて資料調査を行うことができなかった。そのため、やむなく以前収集した資料の分析をもとに口頭発表をおこなった。(「エドマンド・ブランデンと原子爆弾――長崎講演と『日本遍路』(1950年)を中心に――」、筑波大学比較理論文学会、2022年2月12日) この発表の概略を述べる。ブランデンは数度にわたって来日しているが、占領下の日本を1947年から1950年にかけて、イギリス政府の対日文化政策、すなわち英国をも敵視した日本政府の戦時政策による日本人の英国に対する敵意を緩和するために、東京大学を拠点として教育活動をしつつ、全国各地で英文学の講演を行った。この講演旅行の一環として長崎市でも講演を行ったが、地元メディアでの報道で確認する限り、イギリスのロマン派の詩人、特にウィリアム・ブレイクの紹介であり、原子爆弾の投下には一切触れないものであった。 この講演から1年後にブランデンは離日するが、そのあとに英語と日本語訳の合本の形で出版した日本滞在記『日本遍路』(1950年)においては、長崎原爆の爆心地を垣間見たことに触れているが、あくまで(被爆という)「過去」ではなく(復興という)「未来」を見ようと結んでいる。これこそがイギリス政府がブランデンに望んだ言葉だと考えてもよいだろう。 なお、この発表は、2022年度中に論文化する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
長崎市・県の公共図書館、特に県立図書館郷土史課における資料の閲覧ができなかった。新型コロナ禍の影響で、施設の閉鎖と他県者在住者による長時間の閲覧の停止措置がとられたためである。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」で略述した口頭発表の活字化をおこなう。そのためにも長崎市・県での追加の資料調査をおこなう。なお、2022年度も新型コロナ禍のため長崎市・県での資料調査が困難である場合は、長崎市・県以外の図書館等でも閲覧が可能な『長崎新聞』などのバックナンバーや縮刷版を閲覧することなども選択肢とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ禍の悪化による移動制限や、大学・公共図書館、特に長崎大学中央図書館や経済学部分館、長崎県立図書館の郷土資料課などにおける閲覧停止措置、特に他県者在住者の入管禁止措置のため、英国詩人エドマンド・ブランデンの長崎講演についての詳細な資料調査を行うことができなかったためである。2022年5月現在、行動制限がない状況が続いているため、今年度は長崎市・県での資料調査を行う予定である。なお、他県者在住者の利用禁止や制限措置が緩和されない場合、こうした措置がない場所での代替的資料調査(『長崎新聞』のバックナンバー等)を行うことも想定している。
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