研究課題/領域番号 |
18K00413
|
研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
小田 敦子 三重大学, 人文学部, 教授 (80194554)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | エマソン / パブリック・インテレクチュアル / 自然 / アメリカ詩 / 翻訳 / 敬宇中村正直 / モダニズム |
研究実績の概要 |
6月21日に~24日に京都で開催された国際ポー・ホーソーン合同学会に、アメリカのエマソン学会から派遣されたパネル、研究協力者Sarah Widerが組織した“Emerson in translation"で、エマソンの翻訳論を詩 "Woodnotes II"に表現された自然観と関連づけて発表した。参加者との質疑応答でもエマソンの考える普遍性と西欧語におけるエマソン翻訳の困難性など発展的な議論になり高評を得た。 6月30日には、日本ソロー学会の協力を得、大東文化大学小倉いずみ先生との共催で、WiderのC. Sturgisとエマソンとの自然への考察に関わる基調講演に始まる研究会を行い、他の19世紀研究者とも意見交換ができた。 7月にハイデルベルク大学で開催されるアメリカのエマソン学会に、「文学・哲学・宗教」をテーマとする学際性に関心をもち出席した。WiderもSturgisの自然観と超絶主義との関係について発表を行い、また、多くの発表が本研究に深く関わる、post-secular、また、Panentheismについて考察しており、今後の展開のしかたについて、6月の国際学会での課題を発展させる有益な情報を得、意見交換することができた。 自然をめぐるエマソンのエッセイ集の翻訳を進めているが、エマソンのエッセイの日本語への最初の翻訳者、「報償論」の訳者・中村敬宇についても調査・研究を進め、2月23日に放送大学三重学習センターの公開講演会で「明治の日本人に影響を与えたアメリカ文学」の題で、エマソンともう一人敬宇が訳したイギリス人、S.SmilesのSelf-Helpとの比較からエマソンの特徴、日本人の受容のしかたについて講演した。 3月末には、共同研究者Anita Pattersonとボストン大学で研究打合せを行い、エマソンのめざした普遍性のモダニズムとの関連性を中心に議論を深めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度から19年度にかけて三重大学が日本英文学会中部支部の事務局を引き受け、その事務局長の仕事や、大学の学科目代表としての仕事に時間をとられることが多く、調査研究の成果を論文にまとめることができなかった。また、エマソンのエッセイの翻訳もまだ「自然」の訳稿のみで、1年間の予定の半分にも達していない。しかし、2019年度はそれらの仕事が軽減される予定であり、進めている調査研究は課題が明確になり、順調に推移していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
パブリック・インテレクチュアルとしての歴史上のエマソンと、作品が表すエマソンの自然観の普遍性とは、矛盾するものがあり、それをエマソンの今日的な理解、受容としてどのように統合していくかが課題であり、2019年度はそれについてさらに検討を重ねていく。その成果の一部は、2019年5月に開催されるホーソーン協会のEconomyをテーマにしたシンポジウムでの発表や、エマソンの影響をテーマに私が企画した秋の日本英文学会中部支部大会のシンポジウムで発表し、批評を仰ぎ、今後の展開に活かしたい。また、それらを口頭発表に終わらせず、論文にまとめて発表していく。 エッセイの翻訳は今年度中に終えることを目指して加速的に進めたい。その過程で明らかになる問題点については、共同研究者たちとメールで議論を続けるほか、夏や冬の休暇期間に研究会を持ち、集中的に議論をして、その成果を最終年度にはシンポジウムや書物の形で公開することを念頭に、共同研究としても確実に進めていく。
|