研究課題/領域番号 |
18K00415
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山田 雄三 大阪大学, 文学研究科, 教授 (10273715)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ふたつの文化 / メリトクラシー / 公共圏 / テクノロジー |
研究実績の概要 |
本研究が明らかにしたい20世紀半ばの事件が文系対理系の「ふたつの文化」論争である。1959年に起こるC. P. Snow (1905-1980)とF. R. Leavis (1895-1978)とのあいだの「ふたつの文化」をめぐる論争。これは政界、アカデミズム、文壇、公共圏を巻き込んだひとつの事件であった。一見すると、20世紀半ばのイギリス限定の議論のように思えるが、実際はそこにとどまらなかった。「ふたつの文化」論争は大西洋の対岸に飛び火し、Julius Robert OppenheimerやAldous Huxley、Lionel Trillingのような著名な文化人に筆を取らせた。大西洋を横断して広がる論争の余波を考察の対象として、西側の言論公共圏をまとめていたコンヴェンション(慣習)やプロトコール(作法)がこの論争を契機に、どのように変わっていったのか。この問いに答えるべく本年度は国内にて入手可能な文献の調査分析を行った。 「ふたつの文化」論争に密接に関わる問題として、20世紀のテクノロジーと人間の関わり方がある。Snowの系譜に、Global Villageの可能性を唱えたMarshall McLuhanを、Leavisの系譜にCultural Studies創始者のRaymond Williamsを置き、両者を比較した。その際に、Williamsの著書Television: Technology and Cultural Formは決定的に重要な図書と考え、翻訳出版するとともに、その意義について考察した。また第二次戦後にテクノロジー開発が国家的事業になるにつれ、社会において芸術が果たす役割についても議論されはじめる。こうした歴史的背景において英国の「アート評議会(Arts Council)」が制度化していくプロセスを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
F. R. LeavisとC. P. Snowによる「ふたつの文化」論争への反応は、今日学術書で紹介されている内容では収まりきれないほど多くの文献に現れている。本研究においては、英国を中心に海外のコピーライト図書館での文献調査を実施することをおもな活動としているが、パンデミックの影響のもと、これらの施設が使えない状況にある。また海外への渡航も現状では控えざるをえない。
|
今後の研究の推進方策 |
ワクチン接種等で対策ができしだい、また英国の諸研究機関が利用可能になりしだい、渡英し、必要な文献の調査・分析を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
パンデミックの影響を受け、研究計画の主要部分を占める海外での文献調査がいっさい出来なかったことと、遠隔授業の準備・実施におおくの時間を割かざるをえず、本研究課題の研究に当初予定していた30%のエフォートを注ぐことができず、研究が停滞した。ワクチン接種等で対策ができしだい、また英国の諸研究機関が利用可能になりしだい、渡英し、必要な文献の調査・分析を行う予定である。また渡航が困難になる場合も想定し、有料のデータベースのサブスクリプションも検討する。
|