研究課題/領域番号 |
18K00423
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
石倉 和佳 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (10290644)
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研究分担者 |
深川 宏樹 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (00821927)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | イギリス文学 / 百科辞典 / 出版史 / ハワイ |
研究実績の概要 |
本研究はロマン主義期にイギリスで出版された百科辞典を取り上げ、執筆・編集から出版までの営為を、知識の集積への過剰な欲求と連動したロマン主義思想の一つの展開として考察するものである。初年度の研究実績は主に次の3つである。(1)18世紀後半から19世紀半ばにかけてイギリスで出版された百科辞典のテキストをWeb上から収集するとともに、大英図書館において原著にあたり各百科事典の特徴を調査した。(2)『ブリタニカ』初版、および19世紀初頭までに出版された百科辞典において、地理的情報(特に太平洋地域)がどのように収録されているかを調査した。(3)本研究の成果発表および学際研究のプラットフォームとして研究会を組織し、報告会を行った。 (1)については、当該時期に発行された主要な百科辞典の重要な版の収集はほぼ終了している。『ブリタニカ』各版については、すでにCD-ROM化しているもの、再版であるためWeb上にも収集されていないものなどがあるが、閲覧の利便性を向上させ微細な改変もフォローできるように、今後も収集に努める。(2)については、この時期の百科辞典の記載項目のうち、各百科辞典の編集姿勢が強く反映されると考えられる、地理的情報、特に環太平洋地域の記載を取り上げ、代表者および分担者(深川)により検討・分析を始めた。(3)研究会では代表者がブリタニカ第7版までにおけるハワイの記述への考察、分担者が文化人類学的方法論の整理等を行った。(カルチュラル・グリーン研究会「カルチュラル・グリーンへのアプローチ」2018.12.22 於 イーグレ姫路)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度、膨大な百科辞典のテキストを整理し容易に閲覧できる環境を整えたこと、および基本的な同時代情報の整理や先行研究の確認等を済ませたこと、また、大英図書館において『ブリタニカ』出版史史料および太平洋探検に関連する史料を収集できたことなどから、次年度以降の成果発表につながる十分な準備が出来たと考える。これまでの研究により、太平洋地域における『ブリタニカ』の記載が、本研究のテーマ上の意義を見出せるものであること、また1810年代から1820年代までは、イギリス出版史上百科辞典出版競争が激化した時期であり、1816年から出版が始まった、Macvey Napier編集による『ブリタニカ』のSupplement to 5th、およびNapier編集の第7版については、『メトロポリターナ百科辞典』(1817-1845)との比較において重要であることが明らかになった。この点の考察が特に必要であることが判明した点は、重要な成果と考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究として、継続してアルバイト等によるテキスト収集を行い、ブリタニカにおけるハワイの記述について、第7版のジョン・バローによる記載内容を中心に多角的に考察する。これに加えて、1810年代から1820年代にかけて、『ブリタニカ』『メトロポリターナ』および『ロンドン百科辞典』の出版競争に絡む、百科辞典の内容の相互関連について、当時のテキスト、草稿類、版権裁判の記録や関係者の動向から考察する。この時期の原資料の一部は大英図書館で収集済みである。 次年度には、1810年代、『メトロポリターナ』の趣意書が出された時期のコールリッジについて、キーツを絡めた論考を、国際学会で発表する予定である。また、しかるべき学会誌において、論文発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、旅費が予定より少なくてすんだことが挙げられる。次年度、当初の予定どおり、旅費として使用する。
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