研究課題/領域番号 |
18K00425
|
研究機関 | 文京学院大学 |
研究代表者 |
フェアバンクス 香織 文京学院大学, 外国語学部, 准教授 (70409613)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | モダニズム文学 / 自伝研究 / マニュスクリプト研究 / アーネスト・ヘミングウェイ / ガートルード・スタイン / F. スコット・フィッツジェラルド |
研究実績の概要 |
本研究は、アメリカのモダニズム作家が執筆した自伝および自伝的作品の草稿調査を行い、それぞれの出版本と比較することによって、草稿が遺族ら第三者による編纂を通じてどのように書き換えられ、作品における「私」が脱構築/再構築されたかを明らかにすると共に、モダニズム文学における自伝の特徴を新たに見いだすことを目的としている。対象とする作家はガートルード・スタイン、アーネスト・ヘミングウェイ、F. スコット・フィッツジェラルド。いずれの作家もジャンル問わず、さまざまな方法で自身の姿や想いを作品に投影した。しかし後年に執筆された自伝(的作品)の多くは、作家の死後、形を変えて出版されており、先行研究もその出版本を元にした論考が大半を占める。本研究ではまず、草稿調査を通じて各々の作家が遺した「オリジナル原稿」を復元し、彼らが自伝 の形で遺した晩年の「声」を浮かび上がらせる。そしてその「声」を多角的に検証することで、モダニズム文学における自伝の再定義を行う。
二年目にあたる2019年度は、ヘミングウェイの草稿分析と自伝(的作品)研究に従事した。主な対象作品はヘミングウェイが最晩年に記した遺作『移動祝祭日』と『危険な夏』。特に、スペイン闘牛を主軸とする『危険な夏』には、ノンフィクションの形式を用いながらも著しくフィクション化された「ヘミングウェイ」が登場する。最晩年に描く彼の自己イメージとはいかなるものだったのか。また、ヘミングウェイにとってスペインや闘牛とはいかなる存在だったのか。草稿研究および生前出版されたスペイン闘牛ルポ『午後の死』(1932)との比較研究に加え、マドリードでの現地調査の結果を踏まえつつヘミングウェイの「追憶のスペイン」の全容を明らかにすることに集中した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年夏にパリとマドリードに行く機会を得たため、19年度と20年度の研究計画内容を入れ替えて、ヘミングウェイ研究に従事した。マドリードで得られた知見が多く、当初研究計画書にはなかった他の遺作『危険な夏』にも着手することになった。晩年のヘミングウェイの自己イメージやそのエクリチュールの特徴をより多角的に考察できるようになったという点において、より進展した成果が期待できると思われる。
一方、2019年度末に実施予定だった米国「ヘミングウェイ・コレクション」での原稿調査は、新型コロナウイルスの影響で中止を余儀なくされた。事情が許せば、2020年度に実施したい。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度はF. スコット・フィッツジェラルドの研究に従事する。当初の予定では、プリンストン大学ファイヤーストーン図書館にて草稿研究を行う予定であったが、新型コロナの影響で実現するかどうかは未定である(2020年5月5日時点)。また、7月末にアメリカのワイオミング&モンタナで予定されていたヘミングウェイ国際学会も同じ理由で中止となり、成果発表が延期されることになった。すでに採択されているが、どのような形でいつ研究発表できるかは未定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2019年度末にアメリカのJFKライブラリー内「ヘミングウェイ・コレクション」で長期原稿調査を実施する予定であったが、新型コロナウイルスの影響で中止せざるを得なくなった。そのために用意しておいた研究費が次年度使用額として残ってしまった次第である。
2020年度は上記に加えて、二件の渡米を計画している。一件目はプリンストン大学ファイヤーストーン図書館で行うフィッツジェラルドの草稿研究、そしてもう一件はアメリカのワイオミング&モンタナで開催予定のヘミングウェイ学会の国際学会である。しかし後者の国際学会は、同じく新型コロナウイルスの影響ですでに中止が決定している。成果発表や調査で渡米することを計画していたが、年度末までに実施できるかどうか、現時点では判断が難しい状況である、
|