研究課題/領域番号 |
18K00426
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
秦 邦生 青山学院大学, 文学部, 准教授 (00459306)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | モダニズム / ノスタルジア / 第一次世界大戦 / 第二次世界大戦 / 戦争表象 / 人間性 / 動物性 |
研究実績の概要 |
本研究計画は、モダニズム期以降のイギリス文学・文化におけるさまざまなノスタルジア的表象とその変容を、情動理論ならびに空間的移動という側面から再考するものである。研究計画の初年度にあたる2018年度は、とくに中心となるイギリスの作家ジョージ・オーウェルの後期作品を再検討し、『1984年』のみならずその前作『動物農場』についても研究をすすめ、第二次世界大戦前後ならびにイギリス帝国の衰退期の時代状況において、オーウェルの批判的ノスタルジアが「人間性」と「動物性」の境界線を問いなおす性質を持つことを研究した。この成果は2018年11月ならびに2019年3月に口頭発表をおこなった。また、20世紀なかばのノスタルジアのひとつの引き金となった第一次世界大戦の芸術表象とその流通にも注目し、前衛画家ウィンダム・ルイスやC・R・W・ネヴィンソンの戦争表象が当時どのように受容されたのかについて研究し、特にその戦争表象が『カラー』という当時の美術雑誌という媒体においてどのように流通・受容されていたのかについて論考を英文で刊行した。また、20世紀後半のポストモダニズム/ポストコロニアリズムの時代におけるノスタルジアの変容についてはサルマン・ラシュディの小説を対象に研究を進め、移民として故郷を離れた作家ラシュディのインド表象が、西洋読者目線の異国趣味と失われた故郷へのノスタルジアとのあいだに引き裂かれる経緯について、日本語での論考を執筆した(2019年度末に論集で刊行予定である)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、研究計画の中心となる作家ジョージ・オーウェルについて既出の論考を中心に再考をおこない、特に人間性と動物性の変容に関するあらたな知見を得ることができた。この問題は今後さらに研究を深める予定であるユートピア文学・ディストピア文学を考える上でも中核的な重要性を持つものであり、次年度以降の研究への重要な一歩となることが予想されるため。
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今後の研究の推進方策 |
初年度におこなったジョージ・オーウェル作品の再検討については今後論文集などの企画を通じて活字化を検討中である。また、これと関連するユートピア文学・ディストピア文学との関係については、H・G・ウェルズの科学主義的ユートピア文学やウィンダム・ルイスのサタイア作品などをジャンル論的に考察することで研究を深める予定である。
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