研究課題/領域番号 |
18K00429
|
研究機関 | 実践女子大学 |
研究代表者 |
深瀬 有希子 実践女子大学, 文学部, 准教授 (20445696)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ハーレム・ルネサンス / 黒人新聞・雑誌 / 民族誌的自己成型 |
研究実績の概要 |
研究目的: 南北戦争後の19世紀末に始まり、未曽有の経済的繁栄を遂げた1920代(ハーレム・ルネサンス期)において出版された、黒人新聞および黒人雑誌を分析の対象とする。それらのテキストにおいて、アフリカ系アメリカ人作家・芸術家が政治的修辞的戦略をどのように変容させたかを探り、アフリカン・アメリカンの民族誌的自己成型の系譜を提示する。 研究実績: 19世紀奴隷制時代には白人パトロンや白人文化受容者層の陰に隠れていたアフリカ系アメリカ人文化受容者層(いわゆる黒人民衆)が、世紀転換期を経て徐々に読み書き能力を獲得するにつれて、広くアメリカ文学文化形成にどのような影響力を持ったかを考察した。まず、19世紀から1920年代にかけて展開した、黒人新聞に関する基本的知識の整理を行った。1920年代の環大西洋的文芸運動として認知されるハーレム・ルネサンスにおける出版消費活動に、数十年前までは読み書き能力を持つことを禁じられていた黒人民衆が、いかに関与したのかを追った。 学会等での成果発表: 2018年6月30日に開催されたアメリカ文学会東京支部シンポジウム「ハーレム・ルネサンス再訪」において、深瀬は、企画担当者・コーディネイターの役割を担った。また、本シンポジウムが『アメリア文学会東京支部会報』としてまとまる際に、編集作業を担った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度夏に予定していたアメリカ合衆国(ニューヨーク)での一次資料の収集を行うことが、校務ほかの理由でできなかった。よって、分析する資料は、インターネット上で入手できるものに限られたため、新聞雑誌記事のレイアウトなどの全体像を把握するのに物理的限界があったため。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度前半における研究の推進方策:2019年7月20日に開催される多民族研究学会(於、実践女子大学)によって、2018年度に行った調査考察に関連するシンポジウム「ハーレム・ルネサンスの地平」を開催する。深瀬は、本シンポジウムのコーディネイター、司会兼講師、及び、海外講師招聘のすべてを担当する。ここでは、W.E.B.DuBoisを筆頭に、ハーレム・ルネサンス期における、哲学、文学、スポーツ、宗教、視覚芸術といった隣接領域の影響関係を考察する。深瀬は、トニ・モリスンの小説『ジャズ』(1992年)をきっかけとして、読者層としての黒人民衆のあり方について発表する。 2019年度後半における研究の推進方策:上記シンポジウムのまとめとして、共著『ハーレム・ルネサンス』の執筆・編集作業に入る。また、2018年度に達成できなかった、アメリカ合衆国における一次資料調査を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2018年度は、深瀬が所属する実践女子大学より、学内研究助成(804,000円)を獲得した。(事業名:「コール・アンド・レスポンスの修辞学―1920年代黒人メディア文化と黒人読者層の分析」)2018年度は本助成金を優先的に使用したために、基盤研究(C)においては700,000円の次年度使用額が生じることとなった。 2019年度は、2018年分とあわせて、1,200,000円の予算が計上されている。その使用計画については、1) 2018年度に達成できなかったアメリカ合衆国における一次資料収集 2)2019年7月20日に開催が予定されている、ハーレム・ルネサンスについてのシンポジウム(多民族研究学会、於、実践女子大学)のための事前準備として、国外研究者からの専門的知識の提供に対して支払う謝金 3)共著『ハーレム・ルネサンス』出版準備のための資料の購入に、主にあてていきたい。
|