研究課題/領域番号 |
18K00429
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研究機関 | 実践女子大学 |
研究代表者 |
深瀬 有希子 実践女子大学, 文学部, 准教授 (20445696)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ハーレム・ルネサンス / ニュー・ニグロ / アレイン・ロック / W.E.B. デュボイス / ゾラ・ニール・ハーストン / トニ・モリスン / 民族誌的自己成型 |
研究実績の概要 |
いまより百年前の1920年代ニューヨークおよびパリを中心に環大西洋的に発展した多彩な芸術活動―「ハーレム・ルネサンス」を、視覚芸術、小説、新聞といった複数のメディアを取り上げ、それに領域横断的アプローチで向き合うことにより、本活動を立体的に描くことを目的とした。アフリカ系アメリカ人の身体や共同体にとどまらず、広く同時代における、人種・民族的自己意識の成型および受容の考察を行った。 2019年度で最も影響力のあった活動は、以下、「研究発表」にて記す①シンポジウム「ハーレム・ルネサンスの地平」(多民族研究学会共催、於実践女子大学)において、隣接領域に属しながらも、制度的な問題もあってか、これまで会することができなかった研究者たちと交流を持てたことであった。その活動の記録は、『多民族研究』に纏められるのみならず、共著『ハーレム・ルネサンス―<ニュー・ニグロ>の社会文化史』(仮題、明石書店)として順調に編集が進められている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年前半は、上記のように、シンポジウム「ハーレム・ルネサンスの地平」開催と、学術誌投稿の形での成果発表、さらに共著の準備という形で順調に進んでいた。しかしながら、2020年に入ってから、コロナ蔓延にともない、2020年春に予定していた米国での現地調査(一次資料の収集)が叶わなかった点を考慮すると、全体としてやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の研究成果を踏まえて、2020年度は、以下二つの点に焦点をあてたい。1)実践女子大学の図書館では1920年代に流通した黒人新聞New York Amsterdam Newsがデータベースにて読める。しかしながら、それ以外の黒人新聞へのアクセスは叶わない状況である。1920年代の黒人読者層の形成を確認するためには、その時代に出版された書物よりもむしろ、新聞雑誌そしてそれに掲載された視覚芸術が、いわゆる一般大衆には受容されていたことが、論集『ハーレム・ルネサンス』の編集作業を通じてより明らかになってきた。よって、2020年度は、米国への渡米が可能な状況になった際には、2019年度に実行できなかった米国議会図書館や大学図書館での一次資料収集にとりくみたい。2) ハーレム・ルネサンスの代表的思想家、アレイン・ロックの1940年代の言論の分析を進めていきたい。1920年代にロックが提示した「ニュー・ニグロ」の概念については、いったんは確認できた。つまり、その概念は現実的には限られた黒人文化受容層を想定したものであり、30年代後半から40年代にかけて、ロック自身が1920年代の自身の考えを修正しつつ、あらたな黒人文化受容層について語っている。この点は、2019年度の研究を通じて、追究すべき課題として明らかになった。よって、1)の一次資料の収集が可能になった際には、ハワード大学にてロック書簡などにあたって、ロックの「ニュー・ニグロ」の思想の変容と受容を考察していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に予定していた米国での一次資料収集・調査が、コロナ禍によって不可能になったため、旅費に相当する額が、次年度使用額として生じた。
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