研究課題/領域番号 |
18K00429
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研究機関 | 実践女子大学 |
研究代表者 |
深瀬 有希子 実践女子大学, 文学部, 教授 (20445696)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ハーレム・ルネサンス / ニュー・ニグロ / アレイン・ロック / W.E.B. デュボイス / 民族誌的自己成型 / ブラック・ライヴス・マター / プラグマティズム / 環大西洋 |
研究実績の概要 |
2021年度の主たる研究実績は、共編著『ハーレム・ルネサンスー<ニュー・ニグロ>の文化社会批評』(2021年8月、明石書店)の出版である。研究代表者(深瀬)は、本書の主たる編集者として、本課題採択の初年度である2019年以降から、シンポジウム等での意見交換を通じて完成された25本の論のほかに、4本のコラム、年表・図版・参考文献リストを配して、1920年代に環大西洋的に形成された「ニュー・ニグロ」の概念を、領域横断的に提示した。具体的には、複数のメディア(小説・詩・新聞・音楽・映画・絵画・演劇・スポーツなど)によって、複数の言語(主に、英語とフランス語)によって形成された、「ニュー・ニグロ」ならびに、「ブラック・モダニティ」、「アフリカン・アメリカンの生」のありかたを包括的に提示した。本書を編纂中の2021年は依然として、コロナ禍において、Black Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター)が展開していたときであったが、1920年代という時代から、この運動の理解のための歴史的、思想的視座を提供することを試みた。また、本書には紙幅の関係から含めることができなかった、1920年代のニューヨークにおける公共図書館とアフリカン・アメリカンの民族誌的アイデンティティ成型の問題を、フレデリック・ワイズマン監督のドキュメンタリー映画『ニューヨーク公共図書館』に関する論考のなかで考察した。 2021年度の後期は、これまでさまざまな文化的媒体のなかで見出してきた1920年代における「ニュー・ニグロ」の概念と、それが1930年代から1950年代に展開してく様子を、プラグマティズムという概念から説明できるかどうかを考察するために、基本文献の収集と読解を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍により、ハワード大学(ワシントンDC)、ションバーグ黒人文化研究センター(ハーレム)、およびバーンズ・コレクションで(フィラデルディア)での、一次資料収集が予定通り進んでいないため。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の研究成果を踏まえて、最終年である2022年度は、アレイン・ロックが、1930年代から1950年代に示した言論をまとめたい。その理由は、この30年代から50年代の議論をまとめることにより、今後、それが1960年代の公民権運動の思想的かつ具体的行動の基盤になっていたかどうか考察するためである。共編著『ハーレム・ルネサンス』で示したように、1920年代にロックが提示した「ニュー・ニグロ」の概念は、環大西洋的に様々な文化的媒体によって共有拡散された。しかし、30年代という経済不況および40年代の第二次世界大戦に突中するにあたり、1920年代のアイデンティティ認識は、ふたたび「新しい」ものへ刷新されたのかどうかどうか、―この点について、依然として遂行されていない、ハワード大学蔵のロック書簡の調査などによって、考察していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額(873,259円)の生じた理由:コロナ禍によって米国での一次資料調査ができなかったため。2022年度は、本研究課題の最終年にあたるが、8月の実行を予定している。
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