研究課題/領域番号 |
18K00434
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
丹治 愛 法政大学, 文学部, 教授 (90133686)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | エミリー・ブロンテ / 『嵐が丘』 / カズオ・イシグロ / 『日の名残り』 / 田園 / ナショナル・アイデンティティ / イングリッシュネス |
研究実績の概要 |
本研究は、田園にこそイギリスのナショナル・アイデンティティ(イングリッシュネス)の本質があるという田園主義的アイデンティティの構築と脱構築の歴史をたどることを主題としているが、今年度は、エミリー・ブロンテ『嵐が丘』、ジョージ・エリオット『アダム・ビード』と『サイラス・マーナー』、カズオ・イシグロ『日の名残り』について研究した。 このうち『嵐が丘』論については、日本英文学会全国大会で口頭発表し、また、それを踏まえて原稿を改稿し、日本英文学会北海道支部の機関誌に投稿した。ゴシック的な崇高なムーアを舞台にした『嵐が丘』が、いかにジェイン・オースティンによって構築されたジェントリー的な田園主義的イングランド観への批判をふくんでおり、18世紀後半以降の農業革命と産業革命の結果、消滅していったヨーマン(ヒースクリフ)に仮託して、もうひとつのナショナル・アイデンティティを提示しようとしているかを論じた。 エリオットの小説については、イングリッシュネスがどこに認められるのかを確認したが、いまだ論文の着想を得たかどうかの段階であり、書きはじめてはいない。イシグロの『日の名残り』については、その背景となるサッチャー時代のヘリテージ文化にかんする論文(「ヘリテージ映画の再定義にむけて――マーガレット・サッチャーの影のもとで」)を、中央大学人文科学研究所編『英文学と映画』に投稿した。『日の名残り』論自体は、現在、書きはじめたところであるが、来年度中には完成できる見込みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
わたしが出版を予定している田園主義的イングリッシュネスの文学史で、いまだ書き上げていなかったのは、E・ブロンテ『嵐が丘』(1847)、G・エリオット『アダム・ビード』(1859)あるいは『サイラス・マーナー』(1861)、D・H・ロレンス『チャタレー夫人の恋人』(1928)あるいは「英国、わが英国」(1922)、イヴリン・ウォー『ブライズヘッドふたたび』(1945)、カズオ・イシグロ『日の名残り』、イアン・マキューアン『贖罪』だったが、そのうち『嵐が丘』については本年度論文を完成させることができた。また、『日の名残り』についても目処を立てることができた。
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今後の研究の推進方策 |
田園主義的イングリッシュネスの文学史を完成させるためにいまだ書き上げていない作品についてこれからひとつずつ書き上げていくが、それだけではなく、これまで単発の論文として書いていた論文を、一冊の本へとまとめるためには、個々の論文について相当の書き直しを要することになる。来年度は、『日の名残り』論を完成させるとともに、一冊の本とするための各論文の書き直しにも取り組んでいく。
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次年度使用額が生じた理由 |
夏期休暇中に資料収集のための連合王国出張を予定していたが、学科主任としての校務が予想以上に多かったため、延期せざるをえなかった。
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