研究課題/領域番号 |
18K00436
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
木村 晶子 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (70267459)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | female gothic / 女性のゴシック / ゴシック小説 / ジェンダー / シャーロット・ブロンテ / ルイザ・メイ・オルコット / アン・ラドクリフ |
研究実績の概要 |
本課題を採択していただいたために、日本ギャスケル協会編『比較で照らすギャスケル文学』(大阪教育図書, 2018年10月出版)に収録された「ギャスケルとアン・ラドクリフ―〈女性のゴシック〉の継承」を完成することができた。知る限りでは国内外で両者の深い関係を論じた研究はなく、労働者の現実や労資対立を描いたリアリズム作家として名高いギャスケルのもうひとつの文学的側面であるゴシックへの傾倒に光を当てることができた。また、リアリズム作品である『北と南』の主題に〈女性のゴシック〉の原点であるアン・ラドクリフの主題との類似性に注目した本論文により、新たな系譜を発見した。
論集『めぐり会うテクストたち―ブロンテ文学の遺産と影響』岩上はる子・惣谷美智子編、春風社,2019年7月出版予定)に収録される「ルイーザ・メイ・オルコット―憧れの作家シャーロット・ブロンテ―『ジェイン・エア』の影響と変容」において、女性のゴシックを鍵概念として論じることによって、英国の〈女性のゴシック〉の伝統がアメリカ文学においても継承されていることを示した。
松岡光治編『ディケンズとギッシング―底流をなすものと似て非なるもの』(大阪教育図書, 2018年12月出版)に収録された論文、「家庭の天使と新しい女―女性像再考―」において、両作家のヒロイン像の変化とリアリズムの特質を論じ、ディケンズ独自のゴシック的想像力にも注目した。〈女性のゴシック〉という文学形式の独自性、ヴィクトリアン・ゴシックというジャンルとの関係を考える上で、ヴィクトリア朝のヒロイン像の変化、ディケンズの文学を研究することは有益だった。また、イギリス・ロマン派学会の依頼により、学会誌『イギリス・ロマン派研究42号』(2018年)にAndrew Smith(ed.)The Cambridge Companion to Frankensteinの書評を執筆した(pp.77-80)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
想定外の日本ギャスケル協会会長職と勤務先の研究科主任の職務によって想像以上の時間がとられることとなり、研究の時間が十分とれなかった。 また、三冊の論文集の分担執筆に、校正等も含めて予想外に時間がかかったため、予定していたアン・ラドクリフの論考も未完成となっている。
ホームページの作成に十分な資料集めにも手間取り、初年度に開設予定のホームページがまだ開設されていない。
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今後の研究の推進方策 |
・タイム・マネジメントにより注意を払い、本課題に集中する時間を増やすよう努力する。 夏休みに資料収集のための英国出張が可能になる予定なので、アン・ラドクリフに関する資料を得て、今年度内に論文を執筆する。 また、ギャスケル研究をFemale Gothicの観点から深化させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
母の入院・手術により、英国出張ができなくなったため。 今年度の夏に出張を延期させていただく。
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