最終年度は日本ジェイン・オースティン協会大会で日本ジョージ・エリオット協会との合同シンポジウムが企画され、アン・ラドクリフに関するテーマで登壇依頼を受けた。改めて〈女性のゴシック〉の原点となるラドクリフの研究を行いつつ、ヴィクトリア朝女性作家への影響を考察した。これまで研究できなかったジョージ・エリオットのリアリズム小説における〈女性のゴシック〉に通じる主題やモチーフなどを見出すことができた他、エリオットのゴシック的中編The Lifted Veilに関する分析も行うことができた。これによって、本研究の19世紀までの段階を、かなりまとめることができた。また、2021年の日本ブロンテ協会のアン・ブロンテに関するシンポジウムで発表した内容を発展させて登壇者4名で出版することとなり、その執筆を行い(原稿提出済で2023年度内に出版予定)、現在、出版準備中である。 本研究ではコロナ禍となり、意図していた海外での発表は見送らざるをえなくなった他、オンライン授業対応、介護負担、自身の健康問題などが生じ、当初の予定を完全には遂行することができなかった。特に20世紀以降の女性作家研究を十分に進められていない。 ただ成果としては、複数の学会(日本ブロンテ協会、日本ジェイン・オースティン協会、日本ジョージ・エリオット協会)で、〈女性のゴシック〉の観点からのシンポジウム発表をさせていただき、日本での研究の少ないこのテーマについてより多くの研究者に知っていただけたことが有意義だった。また、2022年4月のNHK BSで、企画・制作の段階から関わらせていただいたメアリ・シェリーのゴシック小説としての『フランケンシュタイン』の番組出演によって、原作を広く知っていただけたのも社会的意義のある成果と言える。今後はさらに20世紀以降の作家の研究も進めて、これまでの研究成果をまとめるべく準備中である。
|